「おにぎりせんべい」拡販さらに 愛され続ける「本物」であれ マスヤ 浜田吉司社長

三角形のユニークな形状とサクッとした食感、そして香り高いだし醤油の風味で人気の「おにぎりせんべい」。同商品を手掛けるマスヤは1963年、伊勢名物の老舗「赤福」の新規事業として誕生した。マス流通の発展を見据え、赤福餅と共通する「米」を原料に日持ちのする菓子を作ろう、どうせやるなら型破りな商品を世に出したい。研究を重ね、69年に「おにぎりせんべい」は完成する。

創業初期から量産体制を睨み、せんべい生地の連続式乾燥機(FBD)を導入した。「かなり覚悟がいる投資だったと思うが、だからこそ今の当社があるのだろう」と浜田吉司社長は当時の苦労に思いを馳せる。有力小売の協力もあり、瞬く間にヒット商品の仲間入り。発売50年を超えるロングセラーとなった。

近年はセカンドフレーバーとして「銀しゃり」が成長。来年発売10周年を迎える。「おにぎりせんべい」シリーズ全体で同社売上の8割を占めるという。

また72年に投入した「ピケエイト」は、和の「おにぎりせんべい」に対してバタートースト味の洋風テイストが受け、第2の定番の座を確立。これも来年発売50周年の節目を迎える。

現在、マスヤをはじめとするマスヤグループ10社を束ねる浜田社長は、63年に創業家の次男として生誕。証券会社やグループの酒造メーカーでの勤務を経て、92年にマスヤ入社。94年には社長に就き、事業の多角化を進めてきた。

マスヤは、98年に米菓メーカーとして初となるISO認証を取得。05年には、茨城県の日乃本米菓製造の経営を引き継ぎ、関東での橋頭堡を築いた。

組織運営においては「理念経営」を掲げ、従来のトップダウン型からボトムアップ型に体制を転換。さらにここ数年は「自律分権型組織運営」を推し進め、経営幹部の育成と権限移譲を図っている。

「これからの時代に求められるのは、経済的価値と社会的価値を両立させるESG経営。次代にバトンをつなぐために、われわれが心得るべきは、長く愛され続ける『本物』を残すこと、グループの中に有為の人材を育てておくこと、各社の財務に瑕疵を残さないようにすること――の3点だ」と浜田社長。

マスヤとしては、東日本エリアでの拡販と新定番育成の2つを成長軸にトップラインを引き上げる一方、労働生産性を高めるための設備投資や改善活動にも力を注ぐ。

「『おにぎりせんべい』は先代が作り、私の代に引き継がれた。これからも世代を超えて長く愛され続けるブランドとして『懐かしいけど、新しい』と言われるような商品であり続けたい。そして私の代でも、次の世代に引き継いでやれるような『本物』を残せればと考えている」。

そして、「マスヤグループ全体としてのテーマは『地域イノベーション』。グループ企業間のシナジーを深め、地域経済の活性・発展の一助となるような経営を目指していきたい」。