感謝つづられた生活者の直筆手紙にAGF社員が奮起 「働きがい改革」に意欲 明るい竹内社長

6月22日から現職の味の素AGFの竹内秀樹社長。持ち前の明るさがウリで、就任3か月足らずだが、社内の会議では議論がさらに活発化し始めているという。

「営業畑が長く、お客様といろいろお話しをさせていただいた経緯から私自身を分析すると、明るさが私のウリだと思っている。幼稚園三つ・小学校二つ・中学校二つの転校生人生で自ら話しかけて心を開きながら友だちを多くつくれるタイプだった」と自己分析する。

まずは社内の垣根を取り払うことに腐心し、そこから会社全体の風通しを良くしていく。

「社内のエンゲージメント(組織への愛着心)を高めていくことは経営要素として重要。私が推し進めようとしているのは、効率を高める働き方改革ではなく、自由闊達にチャレンジして自分の存在感を明確にする『働きがい改革』で、これをAGF文化に注ぎ込みたい」と意欲をのぞかせる。

社員一人一人が目標を設定しそれを発表する機会も設けた。その狙いについては「会社の中での存在感とは、自分の意見がしっかり言えることだと思っている。それぞれが目標を表明して失敗を恐れずチャレンジし、それを周囲がバックアップする。この動きを加速させエンゲージメントを高めていく」と説明する。

「ブレンディ」のメッセージ付きスティック(味の素AGF)
「ブレンディ」のメッセージ付きスティック(味の素AGF)

竹内社長は、副社長時代から20―22年中期経営計画の立案に携わり、AGFスペシャリティ(独自技術)の徹底追求による価値創造とASVの実行を中計の基本方針に掲げる。この中で、ASVとは、事業活動を通じて社会とともに「ココロとカラダの健康」「人と人とのつながり」「地球環境との共生」をはじめとするSDGsが目指す社会価値を共創することを意味し、その一つの手応えとして「ブレンディ」スティックで展開しているメッセージ付き商品を挙げる。

これはスティック一本一本に「短所じゃなくて、チャームポイント」「いっしょうけんめいはステキ。」といったさまざまなメッセージがデザインされたもので「コロナ禍になって『ナース室でひとりコーヒーを飲もうとしてスティックを手に取ったらメッセージに目が留まり泣けた』といった趣旨の直筆のお手紙が多く寄せられるようになり社員が奮起している」という。

単においしいといった機能だけではなく、ココロを温めてくれる嗜好品の可能性にも改めて気付かされたという。

「『社会課題の解決』という言葉は左から右に流れてしまいがちだが、ココロの部分で多くの生活者がメッセージに呼応してくださったことで、事業活動を通じて企業価値を高めるASVを社員が体感できたのは大きな収穫」と語る。

「ちょっと贅沢な珈琲店 レギュラー・コーヒー プレミアムドリップ」のメッセージ付き商品
「ちょっと贅沢な珈琲店 レギュラー・コーヒー プレミアムドリップ」のメッセージ付き商品

好評につき、期間限定で展開していたメッセージ付き「ブレンディ」スティックは全品種・通年での展開に拡充を図り、「ちょっと贅沢な珈琲店」パーソナルドリップコーヒーの個包装でもメッセージ付きを開始した。

「AGFらしさは何かというと、やはり生活者目線で生活者に寄り添って社会になくてはならない企業になっていくことだと思う。社員のエンゲージメントを高め、社員がAGFをより好きになる『働きがい』改革に取り組む」と意欲をのぞかせる。

ASVの実行では、家庭で過ごす時間の増加に伴い家庭から排出されるゴミの量も増えていることにも着目する。

「コロナで地球環境のことを考えるエシカル志向が急激に高まった。SDGsや社会課題への対応がメーカーとしても必須になっている」と指摘する。

持続的な原料調達では、ブラジル・コロンビア・ベトナムの各産地に液肥を提供するなどして産地支援を行っている。液肥は「味の素」の製造工程で生まれた副産物を活用したものとなる。

17年から展開している徳之島コーヒー生産支援プロジェクトは、地方創生や社内エンゲージメント強化の観点から引き続き取り組む。

「商業ベースにはまだ至ってないが、収穫されたコーヒー豆は宝物。まさにASVであり、一過性ではなく、徳之島の皆様と一緒になってやり続けていく」考えだ。

プラスチック使用量削減では、スティック包材の短尺化や一部紙化、ラベルレスボトルの展開に加えて、「ブレンディ」ブランドの新シリーズ「ザリットル」で行政・流通を巻き込んだ協力の輪が広がっている。

福岡県作成のプラ削減啓発ポスター(右上)とともに「ブレンディ」の新シリーズ「ザリットル」をアピール
福岡県作成のプラ削減啓発ポスター(右上)とともに「ブレンディ」の新シリーズ「ザリットル」をアピール

福岡県では、売場で福岡県が作成したプラスチック削減啓発活動ポスターとともに「ザリットル」をアピール。これを皮切りに同様の取り組みが大分県・神奈川県・静岡県など他県にも広がり「われわれの予想以上に価値を認めてくださっている」という。

なお「ザリットル」の販売・配荷状況は5月に専用CMを投下して以降勢いづく。

「今のところ経済性で支持されているが、環境負荷軽減にお金を払う考えが浸透すれば一気に加速する」と期待を寄せる。

中計のもう一つの基本方針である「AGFスペシャリティ(独自技術)の徹底追求による価値創造」では、家庭外市場のシームレス化や家庭内での時間増といったライフスタイル・価値観の変化に着目し「この変化に合わせて対応力を高め、成長戦略を加速度的に進めていくのが新体制のミッション」と述べる。

家庭外市場のシームレス化の一例には、テイクアウトとデリバリーに特化したゴーストレストランを挙げる。

「『みんなでワイワイ』という外食の本来の価値が失われつつあり、家の外はすべて一つのつながりで生活スタイルがあるというとらえ方をしている。ゴーストキッチンなど新業態の出現に伴い、われわれの存在意義も変わってくる」との見方を示す。

一方、家庭内については「家族団らんもあるが、一人で過ごす時間が増えてくると、簡便に加えて時間のゆとりを楽しみ、リフレッシュを求めるようになる。外でカフェを利用していた人が自宅でカフェのメニューを求めるようになる」と述べる。

業務用ブランド「AGFプロフェッショナルプラス」で「タニタカフェ」とコラボした豆乳クリーミーカフェラテ
業務用ブランド「AGFプロフェッショナルプラス」で「タニタカフェ」とコラボした豆乳クリーミーカフェラテ

販売チャネルのボーダレス化が進む中、EC強化にも取り組む。

「他社と比較するとEC比率は低いものの、味の素グループの中でAGFは断トツで、今後もグループの中でECビジネスをリードしていくことが共通認識。越境ECや一般貿易など海外ビジネスもAGFがグループの中核になっている。まだまだ規模は小さいが、中国のリアル店舗にも少しずつ商品が並びはじめている」と説明する。

竹内社長の座右の銘は「辛苦は無に勝る」。苦労が自己成長につながるとの意味で、味の素社員時代の経験を経て腹に落ちた言葉だという。「簡単に言うと、成長するには失敗したほうがいいということ。苦しい時期が自己成長につながる。何もせずチャレンジしないよりも、前に進んで悩むほうがいい」と語る。

  ◇  ◇

竹内社長は1961年1月6日生まれ(60歳)。兵庫県出身。1984年、早稲田大学法学部卒業後、味の素社に入社し、営業職に配属。「配属当初は大手量販店様の店頭フォローなどフィールド活動を中心に行い、その後、企業様の本部を担当するようになった」と振り返る。

以降、東京支社関東支店長(08年)、九州支社長(09年)、味の素冷凍食品執行役員マーケティング本部副本部長(12年)、味の素執行役員・味の素冷凍食品取締役常務執行役員マーケティング本部副本部長(13年)、味の素執行役員東京支社長(15年)、常務執行役員食品事業本部副事業本部長(16年)を歴任し、19年6月から味の素AGF副社長。

「趣味はあまりないが、車が好き。妻と一緒のときもあるが、箱根・湘南・三浦方面へとひとりで転がしてリフレッシュしている」という。