理研ビタミンの子会社で「ふえるわかめちゃん」や「わかめスープ」を製造する理研食品は4日、岩手県陸前高田市に開設した海藻の陸上養殖施設「陸前高田ベース」の竣工式を同市市長らを招き行った。青のりの原料となる「スジアオノリ」が最初に手掛ける海藻となる。
理研ビタミンは、海藻のリーディングカンパニーを目標に掲げている。17年には宮城県名取市にわかめの種苗生産や海藻の基礎研究拠点となる「ゆりあげファクトリー」を稼働させ、高成長種苗や優良種苗開発に取り組み、その種苗は全国各地のわかめ生産者が使うようになっている。スジアオノリは、近年の温暖化による海水温上昇や台風の大型化などの理由から、15年と比べ生産量は8割減という極端な不作となっており、安定した陸上養殖による生産が喫緊の課題に。理研ビタミンは5年前から高知大学との共同研究を行い、スジアオノリの種苗生産・陸上養殖技術を積み重ねてきており、その知見を生かし今回の陸前高田ベースの稼働となった。
陸前高田市の脇ノ沢漁港に同ベースはあり、成長したスジアオノリの洗浄・乾燥を行う100坪ほどの建屋の前に、中・大型の水槽35基が2千500坪の敷地に並ぶ。通常、わかめはロープに、海苔は網に種を付けて養殖するが、スジアオノリは海を浮遊しながら成長するため、撹拌装置を持つ円形の水槽が設置され、室内で3週間ほど成長させた種苗を直径3.6mの中水槽(5基)に移し、7日後に直径8mの大水槽(25基)に入れ、2段階に分けて成長させると約1か月後には収穫となる。年間生産量は5t(乾燥品)、23年度の2期工事後には10tを予定。
同社は現在、高知大学、東京大学との共同研究で行っているヒトエグサの養殖を目指しているほか、北里大学とも共同研究を行っており、他の海藻についても陸上養殖の適性があるものは今後も挑戦していくとしている。
▽施設名称:理研食品陸前高田ベース
▽住所:岩手県陸前高田市米崎町脇ノ沢漁港内
▽事業内容:海藻類の陸上養殖
▽工場:敷地面積約8千300㎡、建屋面積約324㎡
▽総事業費:2.7億円
▽稼働開始日:21年10月1日▽従業員数:8人
▽目標生産量:25年度にアオノリ類の乾燥品10t。
理研ビタミンは4日、岩手県陸前高田市にある「陸前高田ベース」の竣工披露式を行い、理研食品の渡辺博信社長、理研ビタミンの山木一彦社長が次のようにあいさつした。
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理研食品渡辺博信社長 わかめ事業参入から56年が経過し、わかめと言えば理研、理研と言えばわかめとなったが、海藻事業をより発展させることが長年の課題だった。10数年前からわかめの種苗研究を始め、17年に宮城県名取市でわかめの種苗生産基地を稼働させ、ほかの海藻の研究も始めた。種苗の生産技術を開発することで、ほかの海藻事業へ参入するチャンスができるのではないか、また温暖化など気候変動の影響を受けずに安定生産ができるシステムが将来必要になるという考えがあった。
こうした経緯で研究を始めた海藻の一つがスジアオノリ。産地は関西に多いため近年の温暖化で減作が著しく、陸上タンク養殖も開始されているが供給不足は解消されていない。弊社が研究を開始してから5年、種苗生産技術、タンク培養技術が確立され今回の参入となった。
本日完成したのは第1期工事の施設で、年間乾燥品5tの生産を予定している。スジアオノリの陸上養殖を成功させ、タンク培養のノウハウの技術を積み上げ、ほかの海藻にも展開していくことで、長年の課題だったわかめ屋から海藻屋への転身を図る足掛かりとしたい。
今年は震災後10年の節目の年、この事業を通して陸前高田市が掲げている「海と緑と太陽との共生・海浜新都市」の町作りに微力ながら貢献していきたい。
理研ビタミン山木一彦社長 理研ビタミングループは、研究開発型企業を自負しており、海藻事業では最先端の陸上養殖施設が陸前高田市にできたことをうれしく思っている。また私も宮城県の出身で、東日本大震災から10年目となる節目の年に被災地に施設ができたことを感慨深く思う。陸前高田市も理研食品の本社のある多賀城市も大変な被害を被り今も爪痕が残っているが、陸前高田ベースがこの地域の将来に貢献できることを願っている。
われわれグループは海藻開眼をキャッチフレーズに掲げて、「ときめき海藻屋」のブランドを展開している。中心となる理研食品は、原料基地である東北の地に根ざしながら、「ふえるわかめちゃん」「わかめスープ」という画期的な商品をこれまで提供してきた。近々では閖上の種苗生産が軌道に乗り、大船渡では冷凍海藻事業も拡大し、第3弾がここでの養殖事業となる。
当社がわかめ屋から海藻屋となり、海藻のリーディングカンパニー「ときめき海藻屋」として、この地域や日本中をときめかせる会社として発展していきたい。
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