食品輸出実務と実践塾 Eラーニング開始に向けて⑥ 販売期限 海外向けに対応できない背景と対策

日本の菓子はスナック菓子を中心に賞味期限4~5か月の商品が多い。一方、海外商品の販売期限は18か月ある。『食品輸出実務と実践塾・Eラーニング』では実例を写真で説明しているが、輸入食品販売店でも日本の加工食品の販売期限の短さを実感できる。

日本の加工食品の販売期限はなぜ短いのか。その背景をしっかり理解すると、海外向けと国内向けで販売期限を分けて考えることができる。

すでに大手メーカーの一部は、国内向け、賞味期限表示と販売期限の表示を使い分けている。使い分けができていないメーカーは「勉強不足」であり、「本気で輸出に取り組んでいない」としか私には思えてならない。

日本の加工食品の販売期限が短い背景には、以下の事情がある。

①日本が賞味期限表示を採用していること(海外は日本とは異なるCodexルールの一つである有効期限表示が多い)
②食品メーカーの数が非常に多いこと
 (日本には卸と路線便があり、全国に商品を容易に展開できる・競争が厳しくなるので鮮度で競争をしたがる)
③品質クレームが非常に多い(日本では1PPMを目標にクレーム管理しているが、海外ではそもそも発生しない)

このような背景で加工食品の日付が短くなる土壌が出来上がっている。この3つの背景をまず理解し、自社製品と海外で販売されている類似商品とを品質管理担当者がしっかり調査し比較すると、自社商品の販売期限がいかに短く競争力がないかに気付く。そこが販売期限の海外対応のスタートである。

Codexで販売期間がどう記載されているかは前回の連載でも書いた。賞味期限の定義は日本とCodexの認識は近いが、消費期限の認識は少し異なる。Codexでは賞味期限と使用期限として定義されている。この使用期限が日本の消費期限の考え方に近いのだが、有効期限表示(EXPIRE)として採用している国が多い。

各社の品質管理担当者は、世界の標準ルール・Codexと日本の販売期限表示の違いをしっかり理解し、国内の賞味期限と海外の販売期限を設定する必要がある。

おいしく食べられる賞味期限(BEST BEFORE)と有効期限(食べきる日・EXPIRE)が同じ期間であるはずがない。さらに、販売する相手はクレームを言わない海外の人で、日本人のように品質にうるさくないのである。

海外では卸も路線便もない。例えば、小島が多いインドネシアやフィリピンのような国で全土に加工食品を届けようとすると販売期限が長くないと届けられない。そうした背景も知っておく必要がある。品質管理担当者がグローバルな考え方をしないと販売期限のグローバル対応はできない。

経営者が「海外市場に参入し輸出に取り組む」と意思決定するのは構わないが、「気合と根性で日本で販売している商品をそのまま営業すれば海外で売れる」と考えていると大間違いである。

それではどうやって品質管理担当者に販売期限の海外対応を教えるか。この記事を読んでから研究や調査をスタートしてもよいが、時間がかかるし我流の調査では結論を間違うこともある。『食品輸出実務と実践塾・Eラーニング』に品質管理担当者を参加させて基礎から日本と海外との違いを学ぶことをお勧めする。

海外の輸入食品関係者は、日本の加工食品の品質レベルは極めて低いと考えている。自国の類似商品の販売期限は18か月あるのに、日本商品は4~5か月。その理由は、「劣悪な衛生環境で製造しているからだろう」「日本の食品メーカーに販売期限の変更を求めてもまったく対応してくれない。食品安全のグローバルスタンダードの普及率が低いからだろう」と本気で考えている。

海外の加工食品の販売期限は18か月表示が多い。その理由は何なのか、品質管理担当者に調査させて、答えをぜひ導き出していただきたい。