食品輸出実務と実践塾 Eラーニング開始に向けて⑤ 品質管理/食品安全担当者の育成問題 グローバルセールス 山崎次郎

メーカーや小売、卸の顧問として工場を訪問することがある。感じるのは品質管理、食品安全担当者の力量だ。

好業績の企業は担当者が教育を受けているのに加え実務でも鍛えられ、社内での力量評価を受けていると感じる。一方、品質クレームの発生時に有効な対策も打てず、顧客が満足し納得できる改善報告書を提出できない企業も少なくない。

品質不良が発生したとき、小売側に事故報告書や改善報告書を作成するが、食品安全担当やお客様サービス担当が作成した事故報告書の多くは改善意識が希薄で、具体的に明確な対応が見えないケースが多い。その結果、クレーム処理はしっかりした報告書があれば終わるのに、終わらない。

小売側が求める事故報告書作成の基本は「原因分析を4Mで説明されている」こと。4Mで原因を徹底分析し、具体的な改善対策を打った記録が添付資料にあることが必須だ。

品質管理の基本だが、食品安全担当もお客様サービス担当者も教育を受けていなければ分かるはずもない。社内の品質管理レベルの脆弱性を小売側に把握され、「他の商品の取り扱いをして大丈夫か」と追及された結果、過去にさかのぼって新たなクレームが発生してしまう。経営の皆様には、改めて生産性だけでなく、品質管理や食品安全の重要性を強くお伝えするとともに、担当者教育の必要性を進言したい。

品質管理の一般的な資格は「JIS品質管理責任者」だが、食品安全担当者の一般的資格は「ISO22000の審査員」である。「ISO22000」の「有資格者」から「審査員補」「審査員」「主任審査員」と順に上がり、「工場監査」の資格に行き着く。

有資格者が何人いるかが、その工場の食品安全の専門性の一つの尺度となる。小売側が工場監査をすることはままある。その際、食品安全の免許を持つ有資格者が来るのか、無免許の監査員が来るのかを事前に確認しておくことをお勧めしたい。後者の場合、自分の経験に偏った視点で改善依頼や問題を指摘しがちだ。社内に食品安全の有資格者がいれば偏った対策を重ねずに済む。

偏った対策とは、異常に管理文書が多いとか、異常に毛髪の混入対策にコストと時間をかけたりすることである。屋上屋を重ねコストをかける企業が少なくないが、それは食品安全の専門家が社内におらず、その妥当性を判断できないからだと思う。

社外監査員を受け入れる場合は事前にその監査員の食品安全の資格を確認し、そのレベルに合わせて改善対策をすれば良い。自社の食品安全担当が優秀であれば不要なコストを削減することができる。

食品輸出に取り組むには、品質管理担当者や食品安全担当者の力量が必要になる。経営者が食品安全や品質管理に理解を深め担当者を育成しなければ、食品添加物や販売期限の海外対応の議論を開始できない。

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