コーヒー飲料市場を牽引しているパーソナルタイプのペットボトル(PET)コーヒーで、味わいや容器・サイズで変化が見られる。コロナ禍による生活様式の変化を受けた動きで、今後も変化に対応した新たな提案が予想される。
PETコーヒー市場の過半を占めるのは砂糖・ミルク入りのラテ市場。健康志向が高まる一方、ストレス過多な社会では糖分やミルク分によるリラックスやリフレッシュが欠かせないということで支持を集めている。
今年はこのラテ市場で抹茶ラテが脚光を浴びたほか、ミルク感を訴求したラテが多い中で、コーヒー感を重視した味わいで好スタートを切ったのがキリンビバレッジの「ファイア ワンデイ ラテ微糖」。3月の発売開始から約6か月で6千万本を突破した。
「ラテ一つとっても奥深く、多岐に細分化している。『ファイア』はコーヒーブランドであることから、『ラテ微糖』では直火仕上げのコーヒー感や香り高さで差別化を図った」と山中進マーケティング部ブランド担当部長代理ブランドマネージャーは語る。
ラテに次いでボリュームが大きくPETコーヒー市場の約3割を占めるとされるブラックは、スッキリ飲みやすい味わい(薄い)から、コーヒーが感じられるコクのある味わい(濃い)へのシフトが見られる。
17年の登場以来、PETコーヒー市場を切り開きスッキリ飲みやすい味わいで定評のある「クラフトボス ブラック」(サントリー食品インターナショナル)も、よりクリアで香り高い味わいに磨きをかけた。
コーヒー飲料でコーヒー感がより求められるようになっているのは、コロナ禍によるお家時間の増加でレギュラーコーヒーなどの手淹れコーヒーの飲用機会が拡大したことが背景にあると思われる。
UCC上島珈琲は「PETコーヒーユーザーの味覚の基準がレギュラーコーヒーになってきている」(杉山繁和取締役副社長)との見方から、レギュラーコーヒー本来の香り高さとおいしさを追求した新ブランド「UCC COLD BREW」を立ち上げた。3月に「BLACK」を発売したところ、3-6月は前身商品で展開していた前年同期に比べ約1.8倍に拡大した。
コーヒー感や本格感を求める動きに伴い容器・サイズでも変化が見られる。容量は現在500㎖前後が主流だが、手淹れコーヒーしか飲まない人(非RTDコーヒーユーザー)と手淹れ・RTDコーヒー併飲層を合わせた6千400万人規模のコーヒーユーザー獲得に向けて270㎖サイズで展開しているのは「コスタコーヒー」(コカ・コーラシステム)。
コーヒーのアロマをより楽しんでもらうことを狙い広口の新容器を採用し、コーヒー豆は厳選した高級豆のブレンドとレインフォレスト・アライアンス認証コーヒー豆を100%使用した点が特徴となっている。
新容器は「ジョージア」(コカ・コーラシステム)からも発売。再栓できないショート缶ではとらえきれなくなってきているショートブレイクの機会に向けて195㎖サイズの「ショット&ブレイク」を展開している。
「クラフトボス」と比肩する500㎖PETの「ジョージア ジャパンクラフトマン」については今後見直しを図る。
日本コカ・コーラの成岡誠マーケティング本部コーヒー事業部ディレクターは500㎖PETについて「コーヒー飲料(RTD)を飲まない新しいユーザーを取り込むことに成功して近年のコーヒー飲料市場の成長を支えてきたが、新規獲得が順調に伸びなくなり上限に達しつつある」との見方を示している。
なお、コーヒー飲料市場(コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料など、コーヒー入り乳飲料)は総じて、新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛や移動などの活動量低下で苦戦している。
全国清涼飲料連合会の「2020年清涼飲料水生産数量及び生産者販売金額」によると、20年コーヒー飲料市場は生産量8.2%減の303万9千700㎘、生産者販売金額9.7%減の8千167億9千100万円と大きく減少した。
今年のスタート時には、コロナ収束の期待感もあり、前年の裏返しで二ケタ増の見立てが多く聞かれたが、蓋を開けてみると市場は1-8月でほぼ横ばいで推移している。
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