茶相場に左右されない安定経営が実現 静岡・JAハイナンと鹿児島・堀口園が語る伊藤園の契約栽培とは?

生産者の高齢化や後継者不足などに伴う茶産地面積の減少などを背景に、農林水産省によると、国内の荒茶生産量はダウントレンドにあり16年間で約30%減少し20年は6万9800tとなった。

加えて、茶農家の経営を揺るがす茶相場の低迷は、在宅時間の増加もあり、今年、明るい兆しが出てきているものの、ドリンク原料用をはじめ茶価は近年低迷傾向にある。

このような課題に対し、伊藤園は、原料の安定調達や持続可能な農業に重きを置き、生産者から茶葉を全量買い取る契約栽培を展開している。

静岡・牧之原の農家からお茶を仕入れて伊藤園に出荷しているJAハイナンは、15年に5haで契約栽培を開始。7年目となる現在は、50倍以上の契約栽培面積となり年々拡大している。

JAハイナンの弓田康詞氏
JAハイナンの弓田康詞氏

「開始当初より定額単価で全量買い取りしていただいていることから農家は安定した収入を得ることが可能となり、生産計画と経営計画をこれまでよりも具体的に考えることができるようになった」とJAハイナンの弓田康詞氏は語る。

契約栽培は、茶葉の全量買い取りに留まらず、栽培指導や茶生産にかかわるさまざまな情報提供を行うことで、協働して茶葉の品質向上を目指すもので、一番茶の収穫時期(4月中旬~5月中旬)や二番茶の収穫時期(6月)には毎日打ち合わせが行われる。

「お茶の評価もその場でして下さり、その評価をすぐに農家へ伝えて指導している。打ち合わせは牧之原に対する期待値がヒシヒシと伝わる緊張感のあるもので、我々生産者もそれに応えるべく全力で求められる品質を提供している」と胸をはる。

牧之原のお茶の約9割を占めるのが「やぶきた」という品種。

フェロモントラップ
フェロモントラップ

牧之原では、三番茶は収穫せず、二番茶の収穫後は翌年の一番茶の収穫に向けて、その土台となる、葉のふしめにある小さな芽(新芽)の育成に取り組んでいる。

農薬の使用量を減らす取り組みとしては、フェロモントラップを設置。これは害虫・ハマキムシ(葉巻虫)のフェロモンを発生させて駆除しつつ、その数をカウントしてハマキムシの発生を予察。これにより「ピンポイントで防除し無駄に農薬を撒かないようにしている」。

持続可能な農業の取り組みのひとつとして、ティーバッグ工場を含む契約栽培に参画する茶工場全てがJGAPを取得している。

今後については、伊藤園が3月から機能性表示食品として発売している「一番摘みのお~いお茶」などに期待を寄せる。

「日照時間の長い牧之原ではカテキン豊富なお茶が育ち、牧之原のお茶を全国の皆様にお届けいただきたい。牧之原には元気な若手茶農家がたくさんおり、若手が茶業を続けていけるように応援していきたい」と意欲をのぞかせる。

堀口園の堀口将吾専務取締役
堀口園の堀口将吾専務取締役

一方、鹿児島・堀口園の堀口将吾専務取締役は機能性表示食品「お~いお茶 お抹茶」などテアニン由来のお茶市場拡大にも期待をつのらせている。

「これまでお茶の健康成分というとカテキンが注目されることが多かったが、それだと価格がだんだん安くなる二番茶以降の引き合いが強まってしまう。テアニンは一番茶に最も多く含まれることから高級茶も着目される環境がつくられ、バランスよく様々な種類のお茶が出回るという点ですごく期待している」と語る。

伊藤園と40年以上のつき合いの堀口園。契約栽培を開始したのは06年で、それまで相場の影響を大きく受けていた経営が安定。10年には碾(てん)茶の栽培も開始し、現在、約600haの茶畑で「ゆたかみどり」「さえみどり」「あさのか」「あさつゆ」などの品種を栽培している。

今後も伊藤園との打ち合わせを入念に行い求められるニーズに対応していく。

「農薬を極力使用せず防除していけるのが堀口園の最大の強みであるため、有機栽培や海外需要に対しても注力していきたい。」との考えを明らかにする。

堀口園の先進的な機械。「ハリケーンキング」(左上)「サイクロン」(右上)「ブランジェット」(右下)「スチームバスター」(左下)
堀口園の先進的な機械。「ハリケーンキング」(左上)「サイクロン」(右上)「ブランジェット」(右下)「スチームバスター」(左下)

防除の先進的な取り組みとしては、IPM(Integrated Pest Management:総合的病害虫・雑草管理)がまず挙げられる。これは、化学農薬だけに頼らず環境や安全に配慮した様々な方法で病害虫の発生を抑える農法のこと。

IPMの一例となる契約生産家の鹿児島堀口製茶が運用している機械は以下のとおり。

――台風なみの水圧と風圧でダニなどの害虫を駆除する「ハリケーンキング」
――害虫と枯れ葉を吸引して除去する「サイクロン」
――蒸気で雑草を枯らす「スチームバスター」
――米ぬかを散布しカイガラムシの産卵を阻止する「ブランジェット」

茶の旨みを出すために畑に黒い布をかぶせる被覆栽培を簡易に行う「ブラックシャドー」でも省人化(堀口園)
茶の旨みを出すために畑に黒い布をかぶせる被覆栽培を簡易に行う「ブラックシャドー」でも省人化(堀口園)

そのほか省人化が図れるものとして、お茶の旨みを出すために畑に黒い布をかぶせる被覆栽培を簡易に行う「ブラックシャドー」がある。

スプリングラーでも防虫害対策を行っている。

スプリンクラーは、茶畑の最低地にある温度計がある一定の温度に達すると、自動的に散水が開始・停止され、その情報は生産家のモバイル端末に随時送信される。

契約栽培と他の農家から仕入れた生葉は、茶成分分析計にかけられてから荒茶(半製品)へと加工される。同分析計では、水分、アミノ酸、テアニン、タンニン、カフェイン、ビタミンCなどの数値が測定できる。

「堀口園では“アミノ酸やテアニンを高めたお茶をつくってほしい”といった要望にも対応できる」という。