ストレート果汁と濃縮還元果汁 どっちがいい? 果汁100%ジュースが持つ健康価値の浸透に商機見出すイノセント

果汁100%ジュースには、ストレート果汁100%と濃縮還元果汁100%がある。

どっちがいい?かというと、コスパ重視なら濃縮還元果汁100%、おいしさ重視ならストレート果汁100%と言える。

その理由は異なる製法にある。

濃縮還元果汁は、輸送コストを抑えるため、原料となる野菜や果物を搾り、その水分を飛ばして一度濃縮し重量を軽くしてから輸送し、その濃縮したものを再び水分を加えてもとの濃度へ戻したものとなる。

これにより、輸送コストが抑えられる一方、水分を飛ばしたり加えたりすることで風味や栄養素が若干損なわれると言われている。

加藤愛子氏(イノセントジャパン)
加藤愛子氏(イノセントジャパン)

これに対しストレート果汁は、果物などの果汁を搾って容器に詰め、低温で保存したものとなる。

水で薄めたり砂糖を加えたりしておらず、果物そのもののおいしさが楽しめる反面、保管スペースが必要で輸送コストもかかることから濃縮還元果汁に比べて割高になる傾向にある。

1999年に英国で創業したヘルシードリンクメーカーのイノセントでは、ストレート果汁にこだわり、フルーツごとに設けられた「フルーツチーム」と呼ばれる担当者が世界30か国の中から旬の時期に果汁を安定的に確保。日本には欧州の拠点に集積された原料を冷蔵で温度管理して輸出している。

このためイノセントのスムージーは“まんま、飲むフルーツ”を謳っているが、「日本ではフルーツへの関心が低く、ストレート果汁と濃縮還元果汁の違いもあまり理解されていない」と嘆息するのはイノセントジャパン合同会社の加藤愛子マーケティングプロジューサー(マーケティングプロデューサー)。

イノセントジャパンは19年に営業開始した。

スムージー3品を取り揃えて、同年7月から、それぞれ税込321円の希望小売価格で販売したところ、順調に配荷が広がったものの「スムージーを飲まれる人が思っていた以上に少なく、価格が高いというお声を多くいただいた」ことから20年4月に見直しを図った。

従来の野菜と果汁の品揃えから果汁だけに絞り込んで「やんちゃなキウイ」(235㎖)「おおまじめストロベリー」(同)「やんごとなきマンゴー」(同)のスムージー3品を321円から299円へ約20円値下げして販売開始した。

加えて、夏期限定商品として「ひと夏のキャロット」と「うたかたのパイン」の小サイズ(190㎖)2品を税込248円で発売した。

帽子を被せた商品の売上げの一部を寄付(big knit(ビッグニット))
帽子を被せた商品の売上げの一部を寄付(big knit(ビッグニット))

これらは価格のハードルを下げてトライアルを喚起する施策だが、その効果はコロナの影響で主戦場となるコンビニの客数が減少したことで限定的となった。

「50円単位で値下げすると購入意欲が上がるというデータがあり、お求めやすい価格で夏期限定商品も発売したが、コロナの影響で昨春からの施策の効果がみえなくなってしまった」と振り返る。

逆風の中、手応えとしてはリピーターの獲得にある。

「イノセントの商品は一度試してもらうと満足度が物凄く高く、購入者のリピート本数は安価な競合商品と比べて全く劣っていない」と述べる。

イノセントでは、消費者をドリンカーと呼び、日本に上陸した19年から24年までの5年間は、ドリンカーとの良好な関係構築のための投資期間と位置づけている。

その一環で、昨冬には、big knit(ビッグニット)の企画を日本で初めて実施した。

ビッグニットは、03年にイギリスで始動したもので、イノセントの各国でその国の社会的な問題にチャリティの面で取り組んでいる。厳冬のロンドンでお年寄りに暖かく過ごしてもらおうと、帽子を被せた商品の売上げの一部を、慈善団体を通じてお年寄りに寄付している。

その帽子は呼びかけに応じたドリンカーから毎年驚くほどの数がイギリス本社に届けられるという。

日本のビックニットは、日本の子どもの貧困率解消への貢献を目指し、ニット帽を募集したところ約3000個が集まり、それらをイノセントジャパンの社員が手作業で1つ1つ商品に被せてスーパーなどに卸し、商品1本につき25円を日本財団に寄付した。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、18年の日本の子どもの相対貧困率は13.5%で、ひとり親家族の貧困率は50%を超えており、イノセントはニット帽を通年で集めてこの問題にみんなが気軽に手をさしのべられるきっかけを作っていく。

「商品の売上を通じて世の中にいいことをし始められたのは、企業ミッションに合致し我々にとって重要なこと。金額は大きくないかもしれないが、大きなムーブメントになるように大切に育てていきたい。商品に興味がなくても、見た目のかわいさからイノセントを知ってもらうきっかけにもしていきたい」と意欲をのぞかせる。

定期的なコミュニケーション施策としてはSNSを活用しているが、昨年はSNSでの中傷が社会問題化したことを受け、一時期、SNSを通じたコミュニケーションを停止。その代わりに手紙でのやりとりを呼びかけたところ約2000人の応募があったという。

「社員で手分けをして、それぞれ異なる文面を手書きでしたためたところ、フォロワー数が一気に伸びた。アナログで原点回帰したからこそ、コロナで不安定な中、人と人のつながりを感じるきっかけになり、イノセントらしいやり方としてグローバルや関係会社にシェアされた」と述べる。

今期(12月期)は、“フルーツは健康にいい”の伝達強化を活動の柱に掲げる。「日本は欧州や米国と異なりフルーツはご褒美的なデザートの位置づけとなっている。長期的な施策にはなるが、フルーツが健康にいいことを啓発していくことは重要と考えている」。

この考えの下、フルーツをさまざまなシーンに取り入れることで毎日を今より健康でハッピーに過ごすための活動「フル活」を推奨している。

「フルーツワゴン」(イノセント)
「フルーツワゴン」(イノセント)

日本人の約8割が厚生労働省・農林水産省の「食事バランスガイド」が定める1日のフルーツ摂取目安(200g)に到達できていない状況のなか、日本全国に「フル活」を広めるイノセントのアイコンとして「フルーツワゴン」を考案。1月からフルーツワゴンを走らせてお寺で健康祈願した商品をサンプリングしている。

ツイッターかインスタグラムのイノセント公式アカウントで団体名・人数・ほしい理由・受取可能な日時を記載して選定されれば製品が無料でデリバリーされる。

「コロナでイベントやサンプリングはできなくなってしまったが、こちらからお届けすることはできるということで、これまでに保育園や病院など約80か所に計1万本近くのサンプリングを実施し、今後も継続していく」。

商品面では、引き続き価格面でのハードルを下げるべく、4月にスムージーに続く新カテゴリーの果汁100%のストレートジュースとして「どんだけオレンジジュース」(235㎖)と「ひたむきアップルジュース」(同)を税込216円で販売している。

出足は好調でスムージーの3倍程度の売れ行きで推移しているという。

「200円を切ると購入者が一気に増えることから、税抜200円を目指して企業努力した。ブレンドが複雑な複数のフルーツを使用したスムージーがイノセントの中核の位置づけだが、トライアルの機会をたくさん設けて他の商品との違いを理解してもらいたい」と述べる。

基盤のスムージーにも注力し4月には4品目となる「すべらないバナナ」(235㎖)を税込299円で発売開始した。

「どんだけオレンジジュース」と「ひたむきアップルジュース」(イノセントジャパン)
「どんだけオレンジジュース」と「ひたむきアップルジュース」

販売チャネルはスーパーマーケットと自社ECサイトがメイン。現在400店程度のスーパー、量販店のチャネルを今後も戦略的に導入拡大を図っていく。

「一度トライアルすると満足度もリピートも高いのでトライアルのハードルをとにかく下げたい。チャネル開拓が進むにつれ、カスタマー様とタイアップしたプロモーションも展開していきたい」と語る。

新規チャネルとしては昨年9月に公式オンラインショップを開設した。

なお果汁飲料市場については「ここ5、6年は微減傾向にあるが、その中で1本200円以上の高価格帯オールナチュラルジュース市場は物凄い勢いで伸びている。トレンドに敏感なアーリーアダプターの方から市場が広がっていけばいい」と期待をよせる。