製油業界 1千億円規模の原料コスト増 油脂相場高騰は構造的問題 新たな価格水準へ

油脂 市況 原料高騰 FAO食品価格指数 推移

製油業界は深刻なコスト高に直面している。大豆、菜種、パーム油の主要油脂相場は昨年後半から過去最高値に迫る勢いで高騰。搾油採算が急速に悪化している。業界全体では1,000億円規模の原料コスト増が確実な情勢。天候異変や為替の動向次第で、さらに膨らむ可能性もある。製油各社は4月、6月の値上げに続き、8月からは3度目かつ過去にない上げ幅となる価格改定を実施、油価引き上げを急いでいる。

7月2日時点の油脂相場(期近)は、シカゴ大豆14.5ドル、菜種はカナダの熱波の影響懸念から870加ドルまで急騰。パーム油は3千800マレーシアリンギと、いずれも過去最高に迫る水準で推移している。

国際連合食糧農業機関(FAO)の植物油価格指数=表=は一年前の2倍水準に上昇し、世界的にオイル高が進行している。

大豆、菜種、パーム油ともに生産量が伸び悩む一方、需要面ではコロナ禍からいち早く経済回復した中国が輸入量を増やしており、需給がひっ迫。昨年後半から相場は一変し、大豆は9ドル→14~15ドル、菜種400加ドル後半→800~1000加ドル超、パーム油2000リンギ前半→4000リンギ近辺と、大きく上昇。為替も1ドル110円を突破し、円安傾向を強めていることや、カナダの熱波による影響も懸念され、未曾有のコスト悪化に直面している。

原料コストの上昇は、製油各社の採算を直撃している。J-オイルミルズの今年度の原材料コストは、前期に比べて約400億円も膨らむ見通し。日清オイリオも期初時点で約300億円のコスト増を見込む。製油業界全体では1千億円規模のコスト負担増となるのは確実な情勢だ。

各社とも徹底したコスト削減に努めているが、そのインパクトは大きく日清オイリオ、J-オイルミルズともに今期は減益予想。大幅な原料コスト上昇に対してミールと油脂の価格引き上げが大きな焦点となっている。

製油各社は既に4月、6月と相次いで油脂値上げを実施。コロナ禍で一時増加した油脂在庫は昨年末から減少に転じており、2度の価格改定は「一定の進捗が進んでいる」模様だが最大のヤマ場は8月からの値上げだ。

製油メーカーの営業責任者は「期中3度目も異例だが、㎏50円以上、斗缶800円以上という値上げ幅は過去に例がない。コロナ禍で苦しんでいるお客さまも多い中、大幅な値上げをお願いしなければならないがコスト環境が大変な状況にあることを丁寧に説明していくしかない」と語る。

業界全体で1千億円のコスト増となると08年の再来だが、当時よりも状況は深刻だ。穀物の増産余力が限界に近づき異常気象が常態化するなか、食料需要に加えて、バイオ燃料向けの需要も再び増加傾向にある。

製油メーカー役員は「今回の相場高騰は一時的ではなく、構造的な問題で、長引く恐れがある。相場は新たなステージを迎えており、天候次第ではさらに上昇する懸念もある。安定供給を維持するためにも油脂価格の適正化が急務」と危機感を示す。

3度の値上げによって単純計算で、汎用油は1.5~2倍近い引き上げとなれば、容量の見直しや製品スイッチも含め、新たな価格帯の構築が必要となる。マヨネーズをはじめ、油脂加工品の値上げも相次いでおり、今後は食品全般に波及する可能性もある。

急騰する海外の油脂市況と比較しても、国内の油価は未だ低位に止まっている。穀物需給は中長期的にタイトな状況が予想される中で、サステナブルな価格形成のあり方も問われている。