パン粉業界「宣言延長のたびにキャンセルが」 業務用減少、原料高が追い討ち 価格改定は不可避

「統計上は4%しか減っていないが、実際には2、3割落ちた企業もある。まだら模様で、全体としては1割以上落ちた印象だ」。西日本パン粉組合の小谷一夫理事長はそう語る。2020年のパン粉生産量は前年比3.8%減の15万5千t。だが、小谷理事長の指摘する通り、売上高がそれを大きく上回るペースで減少した企業は少なくない。

その背景には、生産されるパン粉の9割近くが業務用で、それを地方に点在する中小メーカーが担っているという業界構造がある。こうした中、小麦粉をはじめとするあらゆる原料の価格が上昇に向かっている。コロナ禍で得意先も多くが苦境に立たされているため価格転嫁は容易ではないが、各社の経営と業界の未来のためにも適正な価格改定が不可避である。

「緊急事態宣言が延長されるたびにキャンセルという状況が繰り返されてきた」。四国のパン粉メーカー社長は明かす。主な得意先は冷食メーカーや飲食店などで、これら業務用が売上げの約9割を占める。宣言発令中は飲食店が営業を自粛し売上げは激減。そのため、解除後すぐに供給できるようタイミングを見計らいながら製造するが、延長になると得意先からキャンセルを告げられる。延長の発表が直前であればあるほど、在庫は増えるばかりだ。

大阪名物・串カツ店も休業
大阪名物・串カツ店も休業

インバウンド需要がほぼ失われた京阪神。「全体では2割落ち込んだが、京都・大阪の外食向けに限ると半減した」「緊急事態宣言が繰り返され、暇な状況に慣れてしまった」。関西を拠点とするメーカー各社は打ち明ける。

パン粉の生産量は9割近くが業務用だ。惣菜や冷食市場が好調なのを受け、2012年から6年連続で生産量は上昇を続けていたが、18年は0.5%と若干ながら減少に転じ19年も頭打ちとなった。それに追い打ちをかけたのが新型コロナである。

家庭用は内食化により昨年3月に急伸したが、需要の大半を占める業務用の落ち込みをカバーするには至らなかった。実際に昨年の4月、5月は家庭用が2割以上伸長したものの、業務用がいずれも1割以上落ち込んだため、トータルでは4月が7%、5月が11%の減少となった。

こうした中、この4月に輸入小麦の政府売渡価格が改定され、5銘柄平均で5・5%引き上げられた。ここ数年、粉価は上げ下げを繰り返してきたが、増減率が中途半端で価格に転嫁しづらく結局は据え置くということも多々あった。

ただ、今回のように5%以上上がるのは2013年以来である。さらに、値上げは粉だけでなく油脂、糖類、イーストなどあらゆる原料に及ぶ。業界大手の旭トラストフーズ・金田朋宏社長は「今年だけを見るのではなく、これまで積み残してきたものがあり、設備投資もできていない。それらを少しでも改善できれば」と話す。パン粉の製造工程は複雑で、細かいメンテナンスも欠かせない。HACCP対応など衛生管理に関わる投資も増えている。

本腰を入れて値上げに取り組むタイミングが来たと言えるが、パン粉メーカーの得意先の多くもコロナ禍で苦しんでいるのは事実。「小さな得意先は非常に厳しく、値上げがそれに追い打ちをかけるのでは」と危惧する声もある。

だが、先行きが見通せない中、生産量が今後大きく増えるとは考えにくい。小谷理事長は「生産量が増えない中で、採算が合うようやりくりするのは簡単なことではない。少しでもしっかりした値段で買ってもらうようにしなければ業界全体が埋没してしまう」と危機感を示している。