拡大するアイリッシュ グラスフェッドビーフ 牧草育ちのヘルシー牛肉、日本市場定着へ攻勢

ウイスキーやビールで知られる欧州の島国、アイルランド。約490万人の人口に対して、2千500万人分に匹敵する食料を生産する農業大国だ。このうち約9割を輸出。2019年の食料輸出額は1兆6千億円と、日本の1.7倍に及ぶ。

なかでも近年、日本向けの輸出に力を入れるのが牛肉である。

日EU経済連携協定(EPA)が発効した19年以降、日本ではアイリッシュグラスフェッドビーフの輸入量が急増。昨年は約3千937tと、協定発効前の50倍以上に伸びた。高級レストランをはじめとした外食店で採用が拡大しつつあるほか、小売でもライフコーポレーションが取り扱いを開始した。

「アイルランドがこれだけ多くの食料を生産できるのは、自然に恵まれた環境のおかげ。年間を通して降水量が多く、水ストレスは世界的にも最低水準。空気もきれい。大工場や原発はなく、農業が産業の大半を占める」。食品・飲料の国内外での販売を促進する政府機関ボード・ビアのジョー・ムーア氏は語る。

同国で飼育される肉牛の95%が、野外で放牧され牧草を食べて育つグラスフェッドビーフ。1ha当たり2頭未満の農場が76%と、ストレスの少ない低密度な環境で飼育されていることも特徴だ。

成長ホルモン剤の使用は禁止されているほか、個々の牛に与えられた「パスポート」によって、生育履歴を出生時までトレース可能。アイルランドの国家的食品サステナビリティプログラム「オリジングリーン」によって、サステナビリティに配慮された生産が行われている。

今年からは、グラスフェッドビーフの新基準を導入。飼料のうち牧草の占める割合が90%、野外放牧が年間平均220日などの基準を第三者独立機関の監査でクリアした牛肉のみに、これを証明するロゴマークの使用が認められる。同種のシステムを持つ他国と比べても、より厳しい基準になっているという。

世界の消費者に向けて実施した大規模な消費者調査によれば、50%の人が「牧草で育った牛のほうが幸せだと思うので、そちらを選ぶ」と回答。また「グラスフェッドビーフなら価格が高くても買う」と答えた人の割合は64%だった。日本でも今年2月に1千人規模の調査を実施したところ、52%の人がグラスフェッドビーフを認知。自然、ヘルシー、環境に良いといったイメージを持っていることが分かった。

「そう考える人たちは今後さらに増えると確信する。健康志向の人々が増えることで、赤身牛肉への需要はますます伸びていくだろう」(ムーア氏)。

日本市場では、BtoBを主体としたプロモーションに注力する。

今後は意識調査や、シェフ向けの実演イベントによるアピールも計画。「栄養価が高くヘルシーで美味しい」「サステナブルで安全」「高品質への信頼性」といったアイリッシュビーフの魅力を伝え、まずは業界での認知度向上を目指す。

「日本のお客さまと良い関係を築く努力を長らく続けた成果が、この1、2年で表れてきたと感じる。アイリッシュグラスフェッドビーフのクオリティにご満足いただけたことに加え、日本でもSDGsへの機運が高まっていることも要因の一つだと思う」。ムーア氏は日本市場定着へ自信をみせた。

アイルランドビーフ 輸入量 輸入量はEPA発効前の50倍に
輸入量はEPA発効前の50倍に