なぜ今?紀文食品上場 海外展開の資金と土台

紀文食品が13日、東証一部に上場した。初日は公募価格、初値を上回って終えた。それよりも「なぜ今?」上場なのか。練り業界の最大手が上場という方法で資金調達に踏み切った目的は何か。ここ4年ぐらいで同社から盛んに聞こえてきた「海外」がキーワードと思われる。

紀文食品は非上場企業だったが混同されやすいのは以前に「紀文フードケミファ」という豆乳や業務用品を製造販売する子会社を保有しており、同社が東証二部に上場していたことで親会社の紀文食品も上場企業だと誤解する情報も見られたが、今回が初上場となる。

さて、グループ連結売上高約1千億円は、業界2位を大きく引き離したダントツのトップ企業だ。和日配のかまぼこ屋が、ここまで成長することは非常に稀なケースで、多くは賞味期限の制限から配送が間に合う地元商圏での商売が限界。配送デポの整備が進むと関東市場に関西メーカーが多く参戦したが、スーパーのセンター着時間に間に合うようになったものの肝心の商品の差別化は難航。結局、多くは支店も閉めて関東市場から撤退した。同じ条件で全国制覇を遂げたのが紀文食品だ。

随一の企業規模である理由は商品の革新性も挙げられる。チーズを練りこんだ「チーちく」も穴の開いたところにチーズを入れたのではなく、筒状のすり身部分にチーズを入れた発想は昔ながらが取り柄の築地市場では言葉を失うほどの衝撃だった。ほかにも後に当たり前となる豆腐と魚肉を混ぜた商品「魚河岸揚げ」の先進性や、野暮ったい形状を「手作り感」だと言っていた「はんぺん」も紀文食品にかかれば洗練されたデザイン商品に生まれ変わった。

ただ、これらは過去の栄光だ。そもそも練り市場は戦後右肩下がりを続け、ピークの半分規模に縮小。おでん、おせちがここから大きく拡大する見込みも薄い。長らくの課題である若年層の取り込みもまだ時間がかかりそうだ。一方、ここ10年で拡大した包装総菜は乗り遅れた。こちらは同じ和日配の煮豆メーカー(ヤマザキ、フジッコなど)が独占している。つまり国内市場に成長を求めると得意の練り市場以外か、もしくは海外市場となる。

その中で、すでに北米では近年のヒット商品「糖質0g麺」が好調で供給拡大の姿勢。また、東南アジアの重要拠点であるタイの設備更新など海外市場の取り組み拡大に向けた準備期間に入っていた。2017年に同社は80周年を迎え100周年に向けた成長戦略でグローバル展開を明確化している。ここ4年間で戦略立案を含めて資金計画と上場準備を進め、それが「なぜ今」の株式公開となったと思われる。もちろん財務指標の補強も含まれるだろう。国内市場で見せた躍進を世界で見せる準備が整ってきた。

紀文食品 売上高