「経営本」に欠けるもの

本は当たり外れがある。「グループ経営入門」(松田千恵子著、税務経理協会)はタイトルに惹かれて購入したが凡庸な本だった。奥付をみると著者は長銀出身。ムーディーズで信用格付をやっていた人らしい。帯に「グローバルな成長のための本社の仕事」とあったが、そんな経験していないじゃないかと突っ込みたくなる。

▼初歩的なファイナンスを中心に、グローバル企業のCFOに求められる技術的課題を羅列してある。日本の経営はダメ、だからこれが必要です、あれも必要です、あれやっちゃだめ、これやっちゃだめ云々、煩くて仕方がない。

▼これだけ課題を並べられたら、経営なんて面倒臭くなる。この本に限らないが、一見実務的な「経営本」に絶望的に欠けているのは、そもそもなぜ経営するのかという視点だ。

▼経営とは本来、2人以上の組織で何か成し遂げようとしたとき自然かつ必然的に発生する概念なのではないか。良質のビジネス書は、それがいかにエキサイティングで楽しいものであるか、という点が強調されなければならない。

▼楽しくて仕方がなくて、夢中になって、知力体力を駆使して、日夜考えて、どうやったら人や組織を刺激・挑発して活性化させて自分と周囲の人生を充実させるか、その結果としてビジネス上の目的を達成できるか――は本来最高のエンターテインメントの一つだ。

▼グローバルなマネージャーが不足しているのは事実だろうし、ポストコロナで準備する必要も分かるが、なぜ経営をやるのか。要するに面白いから。

▼この手の「経営本」を読みながら、そろそろ俺もこの年だし経営勉強しなきゃな~、事業部門別バランスシートかぁ…なんて考えてる人がいたら、その部下や同僚は実に不幸だ。