マスクの下は

卒業式の立て札の前で写真に納まる女子学生。何の変哲もない春のワンシーンだが、ちょっと違和感を覚える。実は自分の顔写真の下半分を、うまくマスクの上から貼って合成したのだという。言われてなるほどと思うが、笑みを湛えたその一葉は、とても自然に見えた。

▼新型コロナウイルスの感染拡大でマスク生活を余儀なくされて1年。仕事先や近所のコンビニ店員など、ビジネスでもプライベートでも素顔を知らぬままに馴染みになっている人も少なくない。コロナ収束後、会合などで顔をあわせた時に素通りしそうで冷や冷やする。

▼小売店や飲食店の店頭では「マスクの下は笑顔です」と書かれたPOPを目にするようになった。コロナ感染のリスクにおびえながら、客の理不尽な要求に応えなければならない。そんな彼らの苦労を思えば、もっと優しくなれるのではないかと思う。

▼今年は各地で観測史上1位となる早さで桜の開花が進んでいる。木々を見上げれば、蕾とともにマスクの下も自然と綻んでくる。「あともう少し」。そんな言葉が早く現実になればいい。