乳酸菌ヘルベ 「免疫の暴走」を抑制 目、鼻の不快感低減に関与

「血液中の抗体価(マウス試験)」=出典・Yamashita et al.Funct.Foods Health Dis.9(3),166-169 (2019)
「血液中の抗体価(マウス試験)」=出典・Yamashita et al.Funct.Foods Health Dis.9(3),166-169 (2019)

免疫(免疫細胞)に対する関心が高まっている。免疫は、細菌やウイルスなどの外敵から人体を守る一方、人体に無害な異物を「敵」と認識し、さまざまな症状を引き起こすことがある。ハウスダストやダニなどを抗原(アレルゲン)とするアレルギーもその一つ。免疫細胞が抗原に過剰反応し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった症状を引き起こすが、ハウスダストやダニによる目や鼻の不快感低減作用を持つ乳酸菌が存在する。ラクトバチルスヘルベティカスSBT2171(以下、乳酸菌ヘルベ)がそれだ。

ラクトバチルスヘルベティカスは乳酸桿菌(棒状の乳酸菌)の一種。酪農乳酸菌(家畜などの乳の中に棲息)に分類され、古くからチーズやヨーグルトのスターター(ミルクを発酵、凝固させるための乳酸菌など)として用いられてきたが、雪印メグミルクが研究を進めた結果、乳酸菌ヘルベには「免疫制御活性(免疫細胞の過剰な反応を抑える)があることが培養細胞や動物実験で示され、他の乳酸菌よりも免疫制御活性が強い」(冠木敏秀雪印メグミルクミルクサイエンス研究所食品機能研究室主査)ことが分かった。

ハウスダストなどに対する免疫細胞の過剰反応で引き起こされるアレルギーは、T細胞(抗原刺激に応答し、他の免疫細胞の働きを調節する)が、B細胞(抗体産生細胞)にIgE抗体(身体の中に入ってきたアレルギーの原因物質に対して働きかけ、身体を守る機能を持つ抗体)の産生を指示し、それに刺激を受けたマスト細胞がヒスタミンを大量に分泌することで起こる。

乳酸菌ヘルベは「T細胞のうち、Th1(細菌やウイルスに反応)、Th2(アレルゲンに反応)のバランスが崩れ、Th2が強くなるとアレルギー反応が起こりやすくなる。乳酸菌ヘルベは、腸管を介してTh1、Th2のバランスを整えることに関与し、アレルギー症状の発生を抑える」(同)ことで、目や鼻の不快感を緩和し、正常な状態にすると考えられている。

雪印メグミルクでは、目や鼻の不快感症状を有し、血中のハウスダストまたはダニ特異的抗体価が陽性である健康な成人男女を対象にプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験を行った。

介入群には乳酸菌ヘルベを10億個/100g含む最終製品(発酵乳)を1日100g、毎日12週間摂取。対照群はプラセボ(乳酸菌ヘルベを含まない発酵乳)を同量、同期間摂取し、目や鼻の不快感症状の状態をアンケートや日誌、アレルギー関連の血中マーカーを測定することで評価した。

その結果、摂取開始8週目で目と鼻の不快感合計スコアの摂取開始時からの変化量が、乳酸菌ヘルベを含む発酵乳を摂取した群(平均変化スコア―1.6±3.6)で、プラセボ群(同―0.2±3.1)と比較して有意に低下。

また、日誌調査により、くしゃみの回数は、前観察期間から摂取開始9週から12週目の変化量が、プラセボ群(平均回数の変化量0.04±0.52)と比較し、乳酸菌ヘルベ群(同―0.10±0.51)で有意に低下した。

腸内細菌とアレルギーの関係はいまだ全容が解明されていないが、「腸内細菌のバランスがアレルギーの発症に大切なのではないかという意見は多い。乳酸菌ヘルベは腸管の免疫細胞に働き掛けやすい菌と考えている。菌体の関与成分を見つけることで、より詳細な作用機序が分かるのではないかと考えている」(同)とし、今後も研究を進めていく考えだ。

「目と鼻の不快感合計(変化量)」=出典・Yamashita et al.Funct.Foods Health Dis.9(1),52-78(2019)
「目と鼻の不快感合計(変化量)」=出典・Yamashita et al.Funct.Foods Health Dis.9(1),52-78(2019)