飲食業界 デジタル・多角化が活発 コロナで変化が急激加速 連載・アンダーコロナキッチン第3章「新たなニーズ」〈5〉

ネットショップ 流通額の推移(「stores.jp」 ヘイ社)

コロナ禍が直撃している飲食業界では、デジタル化や多角化などに取り組む動きが活発化している。成果を上げる飲食店も現れており期待される分野だが、厳しい面もある。

危機に際して、飲食店などがEC、サブスクリプション(定額制)サービス、フードトラックなどのサービスに関心を向けており、サービスを提供する企業への問い合わせが増えている。ネットショップの開設サービス「ストアーズ」などを展開するヘイ社が公開する流通額=グラフ=によると、18年2月から成長が継続。20年は食料品のネットショップ開設が急増し、19年と20年の4~6月を比較すると約13倍になったという。

消費額も約8倍に増えた。巣ごもり需要だけでなく応援消費の意欲も取り込んだとみる。実店舗はコロナの影響で閉店しても、ECで営業を継続している例もある。

サブスクサービスを展開するfavy(ファビー)社でも、昨年7月には問い合わせが急増、コロナ禍前と比べて20~30倍になった。緊急事態宣言が終了しても飲食店への客足の戻りは鈍く「何かしなければ潰れる」という切迫感を感じたという。第3波を受けて問い合わせは再び増えた。サブスクの利用で顧客情報を管理でき情報配信も可能。消費者接点を強化できることも強みで、大きな成果につなげた個店もある。今春は顧客管理のシステムを大幅に刷新する予定だ。

リアルでの多角化を進めるため、フードトラックを利用する動きもある。フードトラック事業者にサービスを提供するMellow(メロウ)社は、フードトラックは飲食店の情緒的な要素を含めたリアルな価値を提供できると話す。コロナ禍でオフィス街での需要は落ち込んだが、マンションなど住宅地といった新しい需要を掘り起こせたという。

デジタル化は切り札になるのか。ある大手IT企業の担当者は「有力な手段だが、厳しい面もある」と語る。実店舗の場合、競合は地域内だが、ECは全国となる。商品の独自性や品質はもちろん、ネットショップへの誘導にも工夫が求められよう。

また自社の強みとニーズを合致させることも必要だ。デジタルではニッチなニーズを見つけやすいとも言われるが、実際には独りよがりの展開は失敗しやすい。フードトラックでも需要に合わない車両を購入してしまう事業者が散見されるという。サービス提供会社が開く説明会、研修会で情報提供されており、それらで基礎的な情報を得ることも必要だ。「思い込み」による独りよがりの展開は避けたい。

多くの関係者は現状について「強い圧力で変わらざるを得ないタイミングに来ている」と話す。コロナ禍前から、デジタル化やそれらを利用した多角化といった変化の必要性は言われてきたが、実際に大きな動きになるのは「23年頃から始まる」と言われていた。それがコロナ禍で一気に加速した形で、新しい需要として急激に膨らんだ。コロナ禍が収束しても、後戻りするとは考えにくいことからデジタル化、多角化は急務だ。失敗の事例に学びつつ、新しいニーズへの対応を急がなければならない。パンデミックは図らずも新しい需要・展開を創出しており、その変化に対応できたものから生き残りの切符を手にするだろう。