乾麺 5年ぶりV字回復 増産の機械麺、平常の手延べ麺 連載・アンダーコロナキッチン第2章「需要激変」〈18〉

2014-2020 乾麺生産量の推移(食品需給研究センター)

2020年の乾麺総生産量は、前年より5%増の着地予想。食品需給研究センターが発表した1~11月乾麺類生産累計は18万142t。12月末までの一年間では19万t台に達し、5年ぶりのV字回復が見込まれる。

平成元年に約25万tあった乾麺市場は、近年18万tにまで落ち込んでいた。世帯人数の減少や簡便調理の浸透により、レンジ調理が可能な冷凍麺や水でほぐすだけの生麺が市場で頭角を現すと、大鍋で茹でる乾麺は敬遠される傾向にあった。

しかし感染拡大で在宅率が高まると、昼食需要で利用機会が増えたほか、保存性の高さや1食あたりの単価の低さが見直され、再び注目を集めるようになった。

コロナ第一波が襲った昨年3月は春の棚替え前もあり、当初はうどんやそばなど冬物商材で低価格品の売上げが伸びた。一時は前年の2倍近くに跳ね上がり、機械麺メーカーでは急遽増産に対応。自粛解除後の6月上~中旬頃までひっ迫した環境が続いた。本来この時期は夏商戦に向けて、そうめんやひやむぎなど細物を準備するが、うどんの追加生産のため計画に大きなズレが生じた。

手延べそうめん、手延べひやむぎの市販用は、機械麺同様に低価格帯から欠品。島原産が枯渇すると中価格帯の三輪そうめん、半田そうめんなどへ広がり、高価格の揖保乃糸でも品薄感が漂った。ただし寒製の手延べ麺は製造と販売時期が逆転するので、春の急な受注増加に対応できず、出荷をセーブするしかできなかった。特需がそのまま続けば最盛期の6~7月はお手上げ状態だったが、幸い自粛解除とともに市場が沈静化。遅い梅雨明けも影響して、商戦後に蓋を開けてみれば「思ったほど出なかった」とため息が聞かれたほどだ。

ただ、手延べの場合は贈答用商材も多い。中元商戦開始頃に幸い自粛が解除されたものの、マネキン販売や試食の中止、また一部小売店でサンプル陳列が廃止された影響で、売上げは前年比85%にまで低下した。結局手延べ麺トータルでは、家庭用の伸びを贈答用が相殺。販売比率によって産地、企業間で差があるものの、市場は前年並み前後で着地したと予想される。

第一波を受けて、大手食品卸の一部では早々に乾麺の売上計画を上方修正。コロナ禍の影響がしばらく続くとみて、今年並みの量の確保に乗り出した。

機械麺メーカーは増産体制を視野に入れてこの冬を迎えた。「働き方改革で従業員の残業時間が限られるため、秋から在庫を蓄えている」「今は平常運転だが、生産余剰のある一部麺種では、特需再来とともに瞬発力で対応する」(企業幹部)という。

一方の手延べ麺産地は現在、生産の最盛期を迎えるが、生産者の高齢化や今年6月に期限を迎えるHACCP対応による廃業が相次ぎ、増産どころか生産量を確保するのも厳しい状況だ。揖保乃糸の兵庫県手延素麺協同組合の井上猛理事長は「世帯収入が減れば、量目が多く安価な商品が伸び市場に乾麺があふれる」と語り、手延べ麺の増産のメリットはないと考える。

今冬の巣ごもり消費がどれほど市場在庫を減らすか未知数だが、製造、卸業界の対応策を見る限り、今春の商戦は市場在庫に余裕があり、混乱なく迎えられるものと予想される。