変わってはいけないもの

なぜだか小津作品を続けて2本見直した。見たのは「麦秋」と「秋刀魚の味」。「麦秋」は原節子が嫁に行くという、ただそれだけの話。「秋刀魚の味」は最後の小津映画でカラーだが、岩下志麻が嫁に行くだけの話。大筋は似ているが違うこともある。

▼「麦秋」は食べてばかり。とにかく食事や喫茶のシーンが多い。原節子がお茶漬けをサラサラ食べる名シーンもそうだが、登場人物がひたすら食べ、それぞれの思いや関係性を表現している。

▼「秋刀魚の味」は飲んでばかり。そもそも秋刀魚ではなく鱧しか出てこない。それは良いとして、それぞれに孤独を抱えながら寂しさを紛らわすために男たちは飲み続ける。まとめてしまうと身も蓋もないが、2作品は撮影された時期が少しだけ離れているせいか、登場人物の所作に変化を感じた。

▼「秋刀魚の味」では、若夫婦はもはや訪れてきた父親に座ってお辞儀もしない。ほんの短期間で日本人の日常的な所作が変わったのだ。今回のコロナの件でも社会は激変しているし、完全には元に戻れないだろう。だが、変わってはいけないものもたくさんある。