機能・素材に期待の家庭用冷食 新規層への訴求が課題 連載・アンダーコロナキッチン第2章「需要激変」〈15〉

冷凍食品 アンダーコロナキッチン

緩やかに伸長してきた家庭用冷食は、巣ごもり需要により大きく伸長したが、必ずしも価値が認められて購入されたわけでもなかった。手に取った未利用者やライトユーザーが冷食の価値に気付いてくれるのか、業界の真価が問われる時だ。

ここ数年、冷凍食品の売上げは順調な伸びを見せていた。家庭用も伸長が続くとみられ、20年の年初には通年で売上前年比101~104%程度になるとの予測が多かったが、そこにコロナ禍がやってきた。

2月末から3月の前半にかけて異常な売れ行きを見せ、特にパスタをはじめとする主食系が飛ぶように売れ、あっという間に欠品。次いで米飯やおかずなども棚から消えた。2月~3月半ばの家庭用冷食は前年同期比で二ケタを軽く超える伸長を見せており、商品によっては150%を超えるものもあった。ただ、弁当向け商材は一斉休校やテレワークで減退した。その後は徐々に落ち着いたが上期の家庭用冷食市場は二ケタ超とみられており、下期も堅調な動きだ。

市場関係者の大半は昼食などに向けたストック需要として購入されたとみる。かつての冷食はストック品だったが、最近では買った当日や、それに近い日付で食べるという即食の傾向が強まっていた。仕事帰りに購入し、帰宅後に夕食として、翌日の朝食として利用され、ここに冷食の将来の姿があると考える関係者も多かった。しかしコロナ禍では一時的とはいえ、再びストック品としての需要が高まった。

また、野菜が多いといった健康的な商品にも人気が集まった。これまでも機能を訴求する商品はあったが「冷食で機能系は難しい」ともいわれ、わずかずつの伸びを繰り返しただけで、期待通りのボリュームではなかった。

機能系商品の伸長には期待がかかるだろう。「伸長はまだ先だと思っていた」(メーカー)というが、コロナ禍がこれまでの変化を加速した形だ。

コロナ禍以降に全く新しい需要が劇的に生じたわけではない。「機能系のような、これまでもあった変化がより加速するだけ」と予測する関係者も多く、これまでの需要のうちどの部分が伸長するのかを見極められたものが勝つのだろう。

その中でも素材品の需要が高まる可能性が指摘されている。家庭用冷食には完成食が多いが、料理の素材になる商品もある。家庭での時間が増えたことで料理の時間に余裕が生じ、利用が進むというのだ。実際にニップンのパイシートは好調な動きを見せている。コロナ禍が収束しても家族で調理する楽しみは残ると考えられることから、この分野に期待を寄せる関係者は多い。

今回の伸長は続くのだろうかとの問いには、多くの関係者は「一時的な現象」と返す。必ずしも価値が認められて購入されたわけではなく、危機下で異常な動きを見せただけ、というのだ。それでも、例えば酒類の需要が外から内にシフトし、家飲みが定着傾向であるように、収束後も家庭内需要は19年を上回るとみる担当者は多い。

今回、新たに手に取った未利用者・ライトユーザーも多いとされる。これを機に冷食の品質、利便性などを知ってもらえれば、今後の間口拡大につながるだろう。それらの層に、いかに訴求していくのか、大きな課題が見えてきた。