異例 猛暑でも伸びなかった飲料 外出機会減少が痛手に 連載・アンダーコロナキッチン第2章「需要激変」〈8〉

「夏暑ければ好調」という飲料業界で長らく信じられてきた常識が今年8月に崩れた。

日本気象協会によると、8月は東日本で1946年の統計開始以来1位の高温、西日本も平年差1.7℃のプラスで2010年と並び1位タイの高温となった。高温に加え、月降水量の少なさと月間日照時間の多さでも記録的な月になったものの、飲料の消費は思うようには伸びず、8月単月の飲料総市場は7%減になったと推定される。

昨年8月も好天に恵まれ、昨年の気温差で苦戦傾向にあった上旬の状況を差し引いても、天候の恩恵が得られない異例の落ち込みとなった。この一番の要因は、コロナ禍で人の流れが停滞してしまったことにある。

この影響をもろに受けたのが自販機で、次いでコンビニや駅売店となる。「Go Toトラベル」が実施されているが、通勤や旅行客は減少傾向が続いている。大手鉄道会社の4-9月業績をみると各社の運輸事業は大幅な減収減益となり、売上げは前年同期と比較してほぼ半減かそれ以上の落ち込みになった。

客数減となった販売チャネルが今後、コロナ禍以前の状態に回復するかについては懐疑的な見方が多く、その背景にコロナ終息の見通しが立たないことや、テレワークの定着化、定着化に伴う都市集中から地方分散への流れなどがある。

この一端を示すものとして、東京都が従業員30人以上の都内企業(回答数約400社)を対象に3月と4月に行ったテレワーク導入率の緊急調査結果がある。これによると、テレワークの導入率は4月、3月に比べて2.6倍に拡大したと記されている。

ただテレワークが困難なエッセンシャルワーカーが家庭外での消費を支えていることもあり、自販機からスーパー・量販店・ECなどへのチャネルシフトは緩やかに行われていくと思われる。

コロナ禍で“猛暑でも伸びない”という異例の事態に見舞われた飲料業界の今後の可能性としては、近視眼的には増加する家庭内需要を狙ったケース販売やECの強化といったことになるが、中長期的には一人当たりの消費量を増加させるイノベーションにあると考える。

日本の人口は08年から減少に転じる一方、飲料生産量は一時的には凸凹はあったものの、カテゴリーの多様化や容器の革新で人口減をものともせず大きな流れでは右肩上がりで伸び続けている。

飲料は、お酒のように嗜好性が強くなく、消費者が求める商品がなければ代用品で済ませられてしまうコモディティなカテゴリーのため、企業にとってはいかに顧客接点を多く持つかが重要になる。

その重要な役割を担っている自販機は現在、曲がり角にあるが、無人で働いてくれる一つの売場とみなし、マスクや弁当を販売するなど試行錯誤を重ねながら活性化に向けた取り組みが各社でなされている。