尾西食品「アルファ米」中心に“おいしい保存食” アレルギー、ハラール対応食にも注力

「アルファ米」のトップメーカーの尾西食品は「おいしい保存食」を掲げ、防災・備蓄、アレルギー対応食、ハラール対応食などを展開する保存食のリーディングカンパニーだ。消費者の防災意識が高まる中、緊急時でも日常食を志向する動きが強まっており、「携帯おにぎり」や「ひだまりパン」などは今や食シーンに欠かせない存在になっている。そこで古澤紳一代表取締役社長に基本方針および近況を聞いた。

――創業について。

古澤 当社は1932年に創業の尾西敏保氏がでんぷんの「アルファ化」の加工技術を確立。軍事用食料として重宝されていたものが、戦後は非常用備蓄食料へ発展。災害時の保存食として「アルファ米」を使用した加工食品を開発し、需要が拡大した。

――「おいしい保存食」の品揃えは。

古澤 当社は「おいしい備蓄」としてアルファ米ごはんシリーズや携帯おにぎり、米粉麺シリーズ、ひだまりパン。「食物アレルギー対応(子供向け)」のアルファ米シリーズ味、ポケモンライスクッキー、米粉パン、災害食用ハイハン。「ハラール認証(グローバル対応)」のエスニック、ライスクッキー、それにバラエティ豊かなスイーツなども展開している長期保存食の総合食品メーカーで、消費者や自治体の要望に合わせているためSKUも多い。最近はアレルギーフリーの要望が強まっており、当社商品の約3分の2がアレルギーフリー商品で占められている。

また、グローバル化に対応してハラール認証食品の開発やアウトドア需要に応えた携帯用製品も販売している。5年前に発売した「携帯おにぎり」(実用新案)は、今でも好調に売れており、お湯を注げば15分、水でも60分で食べられ、テレビ番組にも取り上げられた。東京都は、いざという時には3日間分の食品を備蓄しなさいと条例で定めている。しかし3食とも同じごはんでは飽きてしまう。当社の品揃えを利用し、パンやおかゆ、うどん、クッキーなどを食べ合わせれば3食分がカバーできる。

――防災食の基本的な考え方は。

古澤 長期の備蓄(賞味期間5年)が可能な保存食で、いざという時に食べたらおいしく、笑顔で幸せになってもらえるような商品を提供することが基本的な考え方で、「いつでも どこでも どなたにも 美味しいものを」をテーマに掲げている。それぞれの商品の品質には誇りをもっており、宮城工場で製造している。お米にはこだわりをもっており、国産の秋田県産あきたこまちと新潟県産コシヒカリなどを使っている。今後の品揃えとしては、アレルギーフリーの商品をさらに増やし、だれでもおいしく食べられる保存食を目指したい。

――販売チャネルについて。

古澤 最初は備蓄食として市町村に受け入れられた。その後、阪神・淡路大震災など自然災害が多発し、さまざまな場所で備蓄が求められるようになり、自治体や病院、学校など公的機関・施設にも普及。東日本大震災以降は企業向けが増え、東京や大阪を中心とした大企業も備蓄するようになった。さらに地震が頻繁に起こったため、自宅で個人が備蓄をする動きが広がった。特に当社では個人向けにネット販売を強化しており、ここではどこにも負けていない。今年からホームページを刷新し、ネット専用の担当者を配置した。

――今年一年を振り返って。

古澤 コロナ禍に振り回された一年だった。2月中旬から後半にかけて新型コロナウイルス感染症が広がり、個人の備蓄意識が急に高まり、ゴールデンウイークあたりまで需要が急増した。特に個人需要が高まり、インターネットの売上げが伸び続けた。しかし、最近は個人の需要は落ち着いている。また、企業業績の悪化・在宅勤務の増加により、主力の企業備蓄にも影響が出ている。

例年、9月の「防災の日」を中心に各所でイベントが開催され、備蓄意識が高まるが、これらのイベントも今年はコロナで中止になった。行事がすべてキャンセルとなり、消費者の意識もコロナに移り、備蓄の意識が薄れているのではないかと感じている。

――今後の取り組みは。

古澤 パンや麺類市場には大きな期待を抱いており、アレルギーフリーを展開し、アルファ米だけではなく長期保存食の総合食品メーカーを目指していく。消費者の防災意識は次第に上がってきた。以前は、災害が起こっても生きながらえればよかったが、最近は贅沢になり、カレーやけんちん汁など普段とかわらない食事が求められるようになった。緊急時こそ、普段食べている食事がしたいという要望が高まっており、長期保存食化は厳しいが、さまざまな食材をチャレンジしたい。来年3月11日は東日本大震災から10年が経ち、4月14日に起こった熊本大震災からは5年が経つ。来年は大地震から5年、10年の節目の年を迎え、改めて防災、備蓄の意識を促すためにさまざまな取り組みを予定している。