ブランドという「城」

読書の秋。寺山修司は「書を捨てよ町へ出よう」と云ったが、堂々巡りで、町に出て結局、本を手にしてしまう。

▼「天涯の海」(車浮代、潮出版社)、「青き塩」(五十嵐力、文芸社)を読んだ。米酢主流の時代に粕酢を発明し半田から江戸に送り込み、江戸前寿司の誕生を導いたMizkan三代の仕事をまとめた内容。小説ではあるが“もの作り”の矜持を強く感じとることができる。

▼後者は宋代に活躍したが、元に滅ぼされた西夏の塩がテーマ。命を維持するために必要不可欠な塩は古来、貨幣以上の価値があった。日本も中国も専売制を廃止しており、塩の価値観は変わってしまった。

▼閑話休題、大塚家具の大塚久美子社長が辞任するそうだ。ブランドや価値は歴史を重ねて構築された「城」みたいなものだ。精神、理念、これを支えてきた多くの人々の思いをきちんと反映しなければフルモデルチェンジは難しい。件の大塚氏はコンサルタントに転身されるという。どんな経営指導をするのだろうか。まことに興味深い。