「クノール」軸に下半期で勝負 提案力高めながら商品価値を提供 味の素執行役員 神谷歩氏

味の素社は、今年4月に家庭用事業部を再編し、「栄養・加工食品事業部」を新設した。「調味料事業部」と分かれ、商品では「クノール カップスープ」や「具たっぷり味噌汁」などを軸に展開。新部署がスタートした途端にコロナ禍に見舞われたが、秋冬商戦は上半期の経験を生かしながら新たな需要変化を捉え、「下半期で勝負に挑む」。そこで神谷歩執行役員食品事業本部栄養・加工食品事業部長(前執行役員食品事業本部海外食品部長)に聞いた。

――家庭用事業部を再編し、栄養・加工食品事業部を新設した背景は。

神谷歩事業部長(味の素)
神谷歩事業部長(味の素)

神谷 当社は2020~2025年の中期経営計画において、2030年の目指す姿を「食と健康の課題解決企業」と定めており、その経営計画の実効性を高めるために組織運営を改革。食品事業の国内・海外のくくりを改め、事業を軸とした体制に移行するのに伴い家庭用事業部と海外食品部を再編。調味料事業部、栄養・加工食品事業部を新設し、コンシューマー向け食品の事業部体制をローカルからグローバル組織に改組した。

国内で培った技術やノウハウを速やかに海外でも展開し、成長を加速させ、併せて海外の知見を日本にも取り入れて事業成長を加速させることが最大のポイントだ。

――これまでを振り返ってください。

神谷 4月1日に新組織を立ち上げた途端に政府から新型コロナウイルス感染症拡大対策の一環として4月7日に緊急事態宣言が発令され、対面コミュニケーションができないままでのスタートとなってしまった。

国内での新型コロナの影響は一言では答えきれないが、3月に東京都から外出自粛や学校休校要請が発令されると、一気に買いだめを含め「おうちごはん」と呼ばれる需要が跳ね上がり、連休前までは何とか欠品しないよう供給に専念した。

そのトレンドは当分続くかと思っていたが、世の中では「ウイズコロナ」を踏まえた生活を送ることが必要と考えられ始め、先を見通して買った食品が家庭内にストックされた結果、連休明けには一気に販売量が減ってしまった。6月末から7月あたりで何とかステーブルに戻ったが、4~5月では需要の大きな増減が発生した。

――コロナによる需要変化について。

神谷 家庭内飲食とデリカに代表される中食、外食の3つに分けて動向を見ているが、朝・昼・晩ご飯の家庭内飲食の比率は間違いなく高まり、コンシューマー向け食品の需要が一気に上がった。また、健康価値として免疫やバランスの良い食事、栄養に対する生活者の意識も高まった。

さらにテレワークにより在宅時間が増えた結果、よりおいしく、より簡便で、よりバラエティが豊富で、時間があれば手作り感のあるメニューが求められるなど、コロナ禍により新たな需要変化が発生。こうした需要に当社製品できちんと対応することが求められるようになった。

今回の組織再編により調味料事業と栄養・加工食品事業が分かれたが、今後はそれぞれの事業の役割を考えながら製品開発や販売、マーケティングなどに生かしていく。

――秋冬商戦に向けた重点商品施策は。

神谷 栄養・加工食品事業部のメーンのプロダクトは「クノール カップスープ」で、2016年以来4年ぶりに全面リニューアルし、8月下旬から全国で順次販売を開始。こだわり素材と製法による栄養価値と、ほっとするひとときや安らぎといったココロの充足感の提供がリニューアルポイントで、これらを通してお客さまに楽しんでもらうことが基本戦略であり、秋冬の本番に向けてしっかり売っていく。

また、「クノール」ブランドから、袋のまま電子レンジで温めるだけで豆や野菜の栄養が摂れ、食べ応えのあるスープが楽しめるストレートタイプのスープ「クノール ポタージュで食べる豆と野菜」(深いコクの完熟トマト、素材を味わう栗かぼちゃ、緑の彩りえんどう豆)も発売した。

コロナ禍では食事準備の負担感増加によりメニューの品数が減り、食事の栄養バランスが崩れがちだが、新製品は豆や野菜を7~8品目使用したポタージュなので栄養バランスにも優れており、「おうちごはん」のプラス1品になるような提案をしていく。

さらに、フリーズドライ具材とサッと溶ける顆粒のだし味噌が入った即席味噌汁「具たっぷり味噌汁」(なす減塩、ほうれん草減塩、きのこ減塩、豆腐減塩)も発売。長年培ってきた知見と技術を生かし、おいしさはそのままに塩分50%カット・食塩相当量0.8gを実現した。

コロナ禍の第1波では、製品の供給責任を考えながら売れ筋商品に生産を絞り、一部は休売せざるを得ない商品もあったが、秋冬は3、4月の頃に比べればマーケットの見方は想像がつくため、マーケティング活動や商品供給をしっかり展開する。これからのコロナの状況と生活者の反応次第だが、特にスープは気温によって需要が大きく変わるため、できる限りいくつかのシミュレーションをしながら、供給が果たせるように準備している。

いずれにしても商品価値の提供が勝負になるため、提案力を高めながら生活者とのタッチポイントを高めていく。

――今期の見通しは。

神谷 上半期は4月に需要が跳ね上がり、その後は反動が起こり海外も含めて若干厳しい部分もあったが、利益は何とか予定通りだったようだ。だが、栄養・加工食品事業部は下半期が勝負の事業分野なので、下半期でしっかり売っていく。