withコロナ時代の食品備蓄

芥川龍之介は、避暑地の別荘に咲く季節はずれの藤の花を見て、天変地異を悟った。それから数日後の1923年9月1日に、関東南部は直下型地震に見舞われた。

▼関東大震災にちなんだ「防災の日」には、備えを怠らないようにとの戒めが込められている。近年は大規模災害が頻発して備蓄への意識が高まりつつあったが、皮肉にもコロナをきっかけに格段に浸透した。3密を避けるために買い物頻度を減らすようになり、コンビニを冷蔵庫替わりに使う単身者や若者など、とりわけ備蓄に関心が薄いと言われてきた層にも意識が芽生えている。

▼自粛期間中のヒット商品の中に、缶詰やパックご飯などロングライフ食品の名前も連ねる。5年間保存可能な井村屋の「えいようかん」は異常値を記録した。withコロナに合った新しい備蓄とは、もはや日常になった巣ごもりと非常時の両方に活躍する食品やグッズかもしれない。

▼ところで芥川のエピソードは、遅咲きの花と震災が偶然に重なっただけで科学的根拠はないらしい。真実はさておき、災害をある程度予測できる今となっては、日頃から冷静な行動と備えをもちたい。