紅茶の香りが睡眠の質向上 世界初、客観データ用いた臨床試験で判明 三井農林

「日東紅茶」を展開する三井農林のR&Dグループは、筑波大学の矢田教授と共同で臨床試験を行い、就寝時に紅茶の香りをかぐことでストレスを低減し睡眠の質を高める効果があることを明らかにした。

農学博士でR&Dグループグループリーダーの鈴木壯幸氏は「これまでに、紅茶の香りと睡眠に着目した研究報告はされていないが、当社では数年前からヒトでのストレス低減効果を確認し、今回、同じ自律神経系に対するものとして、眠りに対する効果を確認した」と述べる。

睡眠の質を高める効果を調べる臨床試験は、ストレスが原因で睡眠が良くない自覚がある女性20人を対象に「通常の部屋と紅茶の香りを充満させた部屋」の2つの環境を想定して実施した。

具体的には、被験者にダージリン紅茶の芳香蒸留水(アロマウォーター)とプラセボ(香り成分を含まない水)をそれぞれ1週間分渡し、就寝時に超音波式ディフューザーで揮散させて、2週間にわたり個々の被検者の活動状況を測定した。

その際、客観的な睡眠評価として、入浴時以外は活動量計を腹部に常時装着し活動量と体動回数を計測することで睡眠状態を解析。「睡眠の評価において、一般的なアンケートによる主観的なデータ採取に加えて、紅茶の香りの効果検証としては世界初の試みとなる活動量計を用いた客観的な評価も行った」。

被験者は2群に分け、1群は最初の1週間にプラセボを揮散し、次の1週間でアロマウォーターを揮散。2群は1群の逆で最初の1週間にアロマウォーターを揮散させる運びで実施し、活動量計によりデータを取得した。

その結果、アロマウォーターの揮散はプラセボの揮散に比べて、布団に入ってから眠りにつくまでの時間(入眠時間)と目が覚めてから起き上がるまでの時間(離床潜時)がともに短縮したことが判明した。

「特に入眠時間の短縮において明らかに効果が出ており、結果的に睡眠時間が全体的に伸びて、睡眠効率が向上した」とR&Dグループ基礎開発チームの大野敦子氏は語る。

今後については「紅茶葉の中でダージリンの香りが特に香り高いということで用いたが、香りの成分を明らかにしていくとともに、睡眠効率の向上という情報を多くの人に届けるため、さらに大きな規模での試験を考えている」と述べる。

入眠障害、中途覚醒などの睡眠障害は近年、社会生活で重大な事故を引き起こす一因とされる。そのリスクは高まり、日本大学の内山教授らの調査によると、日本の企業における睡眠の問題による経済損失は年間3兆665億円と推計している。

大野氏も「特に入眠困難の不眠症状は女性で多くみられる。更年期障害に悩まされている女性はその傾向にあり、30代後半から50代と年齢を重ねることで睡眠の質が低下している」と指摘する。

三井農林では戦前から紅茶に関する研究を行い、1983年には食品総合研究所を開設。「当社は、お茶の機能性研究に早くから着手し、お茶に含まれるカテキンの力を世界に発信してきたと自負している」(鈴木氏)。

今回の香りに関する研究は、約5年前に着手され、3年ほど前からヒトの生活改善に踏み込んだ研究がなされている。

「紅茶にはポリフェノールのように飲用で効果を発揮する成分はいろいろ発表されているが、香りの機能性への着目は、まだ世界的にも少ないと考えている」と胸を張る。

今回の研究報告は、紅茶の価値向上を目指すマーケティング活動にも活用していく。

阿部慎介リテール&コンシューマーグループマーケティングユニットリーダーは「家での時間が増えているということもあり、多くの生活者が紅茶の時間でのリラックスを体感していると思う。当社としても、機能性研究を通して、紅茶の香りが生活の質を向上させることができることをお伝えするとともに、今後もこういった機能を生かした商品を開発して皆さまにご提案していきたい」と意欲をのぞかせる。