シンガポールに学ぶ政策選択

人口570万人にもかかわらず、コロナ感染者5万人を数え、4月には東南アジア最悪といわれたシンガポールだが、今月マレーシアとの出入国制限を緩和するなど落ち着きを取り戻そうとしている。3月の段階では対策を誤ったが、対策の見直しを行った4月以降は高度な医療制度に加え、濃厚接触者の追跡、徹底した検査などで持ち直した。決裁と方針決定以降の実務までのスピード感がこの国の力だ。ということで「物語シンガポールの歴史」(中公新書)を読んでみた。

▼二度訪問したことはあるが、改めて知るこの国の政治形態には驚かされる。形式上選挙はあるものの言論の自由は存在せず、事実上世襲で首相職が相続されてしまう。「アジア的民主主義」といいながら事実上特異な独裁制。ラジカルでもなんでもない弱小野党でさえ徹底弾圧され続けてきた――など。それでも批判が表に出ないのは、国内では経済の持続的成長を実現し、対外的には外資の投資機会確保を保証し、金持ちに節税機会を与えているからだ。これらをセットで提供すれば、政治過程は一切不問になる。

▼今回のコロナ対策でも後手に回ったものの「その時々でのベストな政策選択」をしたように感じる。これが可能なのは決して教条主義的でないがプラグマティズムを習得し、最新の実用的統治の知見を持つエリート集団がトップにいるからだろう。

▼大手メーカーでもコロナ禍での新たな働き方を模索しているが、「その時々でのベストな政策選択」をできるトップが、新たな活路を拓くことになるのだろう。