お茶で自販機を抗菌 「茶殻抗菌シール」を貼り”見えない不安”から”見える安心”へ 伊藤園

非接触ニーズが高まる中、伊藤園は抗菌効果のある茶殻配合シートを活用した茶殻抗菌シールを開発。現在、これを全国の自販機の購入ボタンや商品取り出し口などお客様が触れる部分に順次貼り付けている。

伊藤園ではクリーンネス(衛生)を自販機活動の柱の1つに掲げ、コロナ禍以降は従来からの清掃活動に加えて、アルコールなどを用いて自販機を拭く除菌を徹底している。だが、そうした中で浮上したのが次の訪問までの抗菌対策という問題だった。

「拭いた時は除菌効果があるが、次にフォローするまで、しばらく時間が経過してしまう。このことを不安視されるお客様のお声が営業から上がってきたことから、すぐに対応しなければいけないと思った」と自販機部の杉浦義典副部長は振り返る。

茶殻抗菌シールを持つ自販機部の杉浦義典副部長(伊藤園)。1枚で自販機1台分に対応。購入ボタン・おつり返却レバー・紙幣投入口・釣り銭口・商品取り出し口の各貼付箇所向けに切り抜きが施されている。
茶殻抗菌シールを持つ自販機部の杉浦義典副部長(伊藤園)。1枚で自販機1台分に対応。購入ボタン・おつり返却レバー・紙幣投入口・釣り銭口・商品取り出し口の各貼付箇所向けに切り抜きが施されている。

ただしこの時は、アルコールや除菌シートが今以上に入手困難な頃で、杉浦副部長があれこれ代替策を思案する中、辿り着いたのが伊藤園ならではの茶殻リサイクルシステムをもとに共同開発された茶殻配合シートだった。

当初は、ヒートアイランド現象の緩和と抗菌・消臭を目的に、茶殻入りのボードを取り付けた自販機を展開。しかし樹脂板だったため、重い・大きいといった不満点が明らかになったことから、ワンウィルとサンロック工業の2社の協力を得て、シート状で自販機に貼り付けるタイプの茶殻配合シートを共同開発した。

環境配慮型自販機として17年夏に横浜で茶殻配合シートの自販機が初披露されたのを皮切りに、全国の観光地や景勝地などに多数展開している。

これに着目し「もともと自販機に貼り付けていた抗菌効果のあるシートを、お客様の触れる部分に付けたら安心安全の売場がつくれるのではないかと考えた」。

そこからの行動は迅速だった。茶殻リサイクル品などの開発の最前線で活躍する佐藤崇紀開発1部第四課長に相談。わずか1ヵ月足らずで茶殻抗菌シールの製品化に漕ぎ着け、約200拠点の支店・営業所に順次配布した。

茶殻抗菌シール1枚で1台の自販機に対応。

開発1部第四課の佐藤崇紀課長(伊藤園)
開発1部第四課の佐藤崇紀課長(伊藤園)

購入ボタン・おつり返却レバー・紙幣投入口・釣り銭口・商品取り出し口の各貼付箇所向けに切り抜きが施されている。

この開発について佐藤課長は「茶殻を多く配合すると、カット時に割れてやすく、シート化にはかなり困難を極めた(茶殻配合シート)。当初は屋外の景観配慮や打ち水効果を期待していたが、営業から抗菌や消臭の機能を打ち出して訴求してみたいとの提案があり、茶殻の配合量を増やし試験を経てシートを完成させた」と述べる。

茶殻抗菌シールの効果については、シールに菌液(大腸菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、サルモネラ菌、白癬菌)をつけて37度で18時間保存し生菌数を測定したところ、MRSAは大幅に減少し、そのほかは検出されなかった。

茶殻抗菌シール(伊藤園)は、購入ボタン以外に、商品取り出し口・おつり返却レバー・紙幣投入口など手が触れる箇所に貼り付けられる。
茶殻抗菌シール(伊藤園)は、購入ボタン以外に、商品取り出し口・おつり返却レバー・紙幣投入口など手が触れる箇所に貼り付けられる。

効果の持続性など今後も引き続き試験を続けていく考えだ。

緑茶飲料市場の拡大に伴い茶殻排出量は年々増加傾向にあり、茶殻を配合したリサイクル製品はこれまで約100種類に及ぶ。

「畳に茶殻をまいて掃除すると部屋の中が清々しい香りに包まれるといった日本人が築き上げてきた茶殻の二次利用を発信していきたい。またリサイクル以上のことにも挑戦していこうと考えており、廃棄物としてではなく有価物として認知拡大も目指している」と意欲をのぞかせる。

一度の生産に限りがあることから現状では茶殻抗菌シールは潤沢ではない。そのため人出の多いところやお客様の要望を受けたところから先行して順次貼り付けている。「茶殻抗菌シールは当社ならではの画期的なアイデア。“目に見えない不安”が“目に見える安心”に変わるはず」と期待を寄せるのは東京東部支店の池田剛史支店長。

合わせて安心感を醸成するものとして、池田支店長は紙幣や硬貨に触れないキャッシュレス化に可能性を見出す。

東京東部支店の池田剛史支店長と吉野悟グループリーダー(伊藤園)
東京東部支店の池田剛史支店長と吉野悟グループリーダー(伊藤園)

伊藤園は、クリーンネスに続く自販機の柱にキャッシュレスとウェルネスを掲げている。キャッシュレスの取り組みでは現在、交通系・流通系電子マネー決済に加えて複数のQRコード決済機能を付けたITアクセス機の設置を強化している。

また、ウェルネスの取り組みは、特に健康に資する商品を1台にまとめ、消費者の健康サポートを目的としており、設置台数も順調に増加している。

自販機部の杉浦副部長は「自販機業態は厳しい状況にある。しかし、消費者の方々の行動パターンや生活スタイルが変わり、その変化に的確に対応していくことがチャンスなのではないかと考えている。自販機は24時間無人営業でき、人との接触を回避できるのも強み。今後は新たな自販機の価値を見出し、より消費者の身近な“店”として存在価値を高めていきたい」と語る。