緊急事態宣言 食のライフライン維持へ業界全力

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に「緊急事態宣言」を発令した。5月6日まで1か月程度をメドに、都府県知事の権限による外出自粛や大規模施設の使用制限、イベント実施の制限・停止を要請する。社会機能維持を担う食料や医薬品を扱う小売店の営業は継続し、食品界は安定供給確保と事業継続に向けた対応を急いでいる。

小売、安定供給を優先 過度の販促自粛

緊急事態宣言の発出を受け、小売各社では対象となった7都府県で営業時間の短縮、ショッピングセンター(SC)内専門店の休業や来店客増につながるチラシ販促の自粛などを進める動きが拡大している。

イトーヨーカ堂は7日、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪のSC15店で専門店の休業を決めたほか、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、大阪、兵庫、北海道の121店で営業時間を短縮する。イトーヨーカドーの食品売場についてはアリオ内を含め全店営業を続けるが、閉店時間を早め午後8時とする。

また、営業店舗での感染拡大策として、食品売場レジでは床にテープを貼り、一定の感覚を空けて並んでもらう取り組みを進める。

専門店の休業については、イオンリテールも緊急事態宣言対象7都府県の57施設で臨時休業する。モールにテナント出店するGMS、SMについては営業を継続する。

ライフコーポレーションは、緊急事態宣言による夜間の外出自粛要請を踏まえ、各店の閉店時間を午後9時または午後10時(一部店舗除く)に変更。また店舗での過度な混雑の緩和、商品の安定供給を図るため、当面の間、チラシの配布・配信を自粛。合わせて一部商品の販売点数の制限なども実施する。

3月28日からチラシ特売、一部のセールを中止しているサミットは当面、チラシ特売、一部セールの中止を継続する。

コンビニ各社は社会インフラとしての役割を担っていることから、原則として平常通り営業を行っている。ただ一部加盟店の判断で、営業時間の短縮や夜間営業の休止を行っているケースもあるようだ。最大手のセブン‐イレブンは、「新型コロナウイルス対策本部」を中心に対応を進めている。当局と連携して商品確保や安定供給、物流機能の確保などにあたり、店舗の営業継続への支援を続ける考え。他の各社も政府や自治体などの方針に従いながら、可能な限り営業を続けていく方針だ。

小売各社では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う内食需要増により2~3月の売上高が増加したが、緊急事態宣言を受けた在宅勤務増などによりさらなる需要増が見込まれることから、過度の販促を控え、商品の安定供給を最優先に取り組んでいる。

食品卸 供給継続に総力 業務用はダメージ深刻

食品卸も商品の安定供給と物流確保に全力を注ぐ。国分グループ、三菱食品、日本アクセス、伊藤忠食品など大手卸は緊急事態宣言発令前から、各センターの人員配置や応援体制、物流パートナーとの協力体制構築などの検討を重ねてきた。

2月の一斉休校や3月末の外出自粛要請時には、ピークの年末需要を上回る物量となっただけに、不要な買いだめによる需要急増を警戒しながらも、物流を止めることなくライフライン維持に努めていく構えだ。

一方、業務用卸各社は緊急事態宣言による市場の一段の冷え込みに危機感を強めている。2月後半から繁華街のホテル・レストランは客数が大幅に減少し、臨時休業も相次いでいる。ユーザーもテイクアウト需要の掘り起こしに努めているが、市場の先行きが見えない厳しい状況が続く。

学校給食関係では4月からの給食再開へ準備を進めていたが、緊急事態宣言直後から給食中止を決定する自治体が相次いでいる。2月末に続く直前でのキャンセルが再び発生しており、深刻なダメージを与えている。

メーカー 生産・物流を継続 製品の絞りこみも

メーカー各社は緊急事態宣言発令後も、食料品の供給維持へ生産・物流体制を強めている。感染予防のため、各社とも本社業務等は在宅ワークに切り替えながら、工場やロジは通常体制で業務を継続。現時点では原料、資材等の調達に問題はなく、巣ごもり消費による需要増大に対応するため、主要製品へのアイテム集約なども検討する。

味の素社、カゴメ、J-オイルミルズ、日清オイリオなどの大手各社は在宅ワークを基本に、工場は稼働を継続。今後の安定供給確保に努める。味の素社では万一、原材料調達等で問題が生じた場合は、生活維持の観点から製品供給に優先順位づけを行い、供給責任を果たす方針を示す。

日清製粉グループ、日本製粉、昭和産業の製粉各社も安定供給確保に全力を注ぐ。パスタやパスタソース、冷凍パスタなどの需要拡大を踏まえ、日清フーズでは一部アイテムを一次休止し、主要製品に絞り込んで増産対応も検討する。

冷食各社も安定供給を確保しつつ、需要拡大への対応を急ぐ。ニチレイフーズは生産・物流面での増産・増便対応を進めるほか、テーブルマークも増産体制を取り、業務用の落ち込み分を家庭用の製造に回すなど、需給バランスを踏まえた対応を検討する。

ミートボールなどを製造する石井食品も、従業員の健康と持続的な生産供給維持の両立を目的とし、可能な限り商品の生産・供給を継続するが、商品の絞りこみや生産数量の制限、輪番納品などが発生する可能性もあるとしている。

アサヒビール、キリンビールおよびメルシャン、サントリー、サッポロビールの酒類4社も在宅ワークの体制だが、商品の製造・物流は通常体制で供給を継続する。ダイドードリンコは対象都府県の事業所は在宅勤務に切り替えるが、自販機の補充業務は必要最低限の人員を確保し、交代で行う。

ヒガシマル醤油も東京・大阪・京都の事務所は基本的に在宅勤務。本社(兵庫県たつの市)は通常体制とした。

地方も危機感

広島市に本社を置く三島食品は、先月から東京本社で時差出勤やテレワークを先行実施。今回の緊急事態宣言を踏まえ、広島本社でも可能な部署ではテレワークを進めるほか、同市内にある中四国支店と業務を分散。「仮に発症者が出た場合でも、どちらかで業務を継続できる体制にする」(佐伯俊彦マネジャー)。

また、感染リスクの高い公共交通機関での出勤を抑えられるよう、社用バスを使い従業員の送迎を行う考えだ。

8日現在、感染者のいない鳥取県。鳥取市の食品卸・徳田商店はこれまでも社員のマスク着用やアルコール消毒を徹底してきた。緊急事態宣言を受け、新たに体温計を用意し測定を義務付けるなど社員の体調管理を強化する。

徳田三明社長は「感染者がゼロとは言え、実際にかかっているかどうかは分からない。今まで以上に注意しなければならない」と話している。