「コロナ」で変わる価値観 非常時こそ「健康・安心」を 喜べない買いだめ特需

新型コロナウイルス感染症が長期化し、重大局面を迎えている。経済界への影響はリーマンショックを上回るとも言われている。食品・酒類・飲料界の販売は総じて伸びているが、食生活にはさまざまな変化が発生しており、各界でも対応を迫られている。

東京都は現状を「感染爆発 重大局面」ととらえ、都市封鎖(ロックダウン)も示唆。関東近県も外出や飲食を伴う集まり、週末の往来自粛を求め、こうした報道が消費者の「不安」をかきたて、店頭では“買いだめ感染”が起きている。関係官庁や業界では、食品は十分の在庫や供給量を確保しており、買いだめに警鐘を鳴らしているが、一度火がつくと収まらない。

その結果、2月のスーパー(既存店)の食品売上高は6%増で推移し、米飯や飲料、ヨーグルト、冷食、納豆、即席麺、パスタなどが売れた。イオングループでは、冷食が1.1~1.3倍、パックごはん、カップ麺等も1.1~1.2倍と例年では考えられない数字。

マルエツでは精肉が8%増と牽引し、全体では7%増で推移。この傾向はコンビニも同じで、パン、惣菜、冷食などの需要が増加し、全体では7%増。セブン―イレブンも保存食品や紙製品などへの需要が増加し8%増だった。いわばコロナ感染の特需と見るべきで、特需には反動減がつきものだけに喜んでいられない。

ある調査では「2月以降、3人に1人がまとめ買いをしており、特に首都圏の30~40代は他の年代に比べて高い」という。「特需は、すぐに消費されないため翌週の需要が極端に減り、需要予測ができなく、生産も読めない」とメーカー。「特需で浮かれている場合ではない」。

スーパーバイヤーも「週末に買いだめ需要はあるが、その反動が起こる」と嘆く。さらに週末はGMSに来店が集中するものの平日は閑散としており、平日に賑わうのは近場の食品スーパーだけという状況で、「完全に買い場や購買行動が変わった」。

今のところコロナ感染の終息の目途はつかないが、混乱後の消費構造は大きく変化するものとみられ、業界も対応を迫られそうだ。

ショッピングカート一杯に積み込まれた商品
ショッピングカート一杯に積み込まれた商品

飲料大手・伊藤園の山口哲生ブランドマネジャーは「例えば野菜飲料の場合、大きな事件、事故、社会不安が起こると消費者心理も大きく変化。これまでにも中国の残留農薬事故やリーマンショック、冷凍餃子事件、東日本大震災の後は極端に需要が上向き、今回もコロナ感染が影響してか野菜飲料が伸びている」と語っている。

また、「野菜飲料に限らず、世の中の変化によって生活者の価値観が変わり、それが購買行動や商品に現れる。今は健康を保ち、生きるための自己防衛意識が強いため、感染不安が高まる中で、免疫力が焦点になっている」と言う。

生活者の価値観の変化とともに、人混みや不要不急の外出自粛、テレワークの浸透などワークスタイルの変化によっても食は変わるはずだ。「3人に1人が勤務体系が変わり、中でも女性の勤務時間減少が顕著に見られる。とくに首都圏は働き方に変化が生じた人が多い」と言われ、ここにフォーカスした戦略は自ずと見えてくる。

健康や生活防衛意識が強まり、スモールライフを志向する消費者が増える中で、食品に求められるものは「安心」と指摘する向きが多い。そして、その根底には「ブランド」が担保となっており、粛々とブランド力を磨くことがコロナ危機を乗り越える最大の近道だと言えそうだ。