“乾麺”から“食品”メーカーへ 手延以外の要素加え訴求 岡山手延素麺 横山 明一郎社長

昨年11月、横山順二現会長から社長を引き継ぎ、「食を通して地域と幸せを共有する100年企業へ」と会社の方針を新たに打ち出した。「われわれが作るのは麺だけだが、売ることができるのはそれだけではない」。

売上げの約4割を占める通販事業では自社商品の手延べ麺だけでなく、地域のさまざまな逸品を扱い好評を得てきた。「乾麺メーカーというよりはもっと広く食品メーカーとして変わり、提案力を発揮していきたい。そのためには口数が減る中、お客さまの選択肢が広がるような商品を多く持つことが大事」。

背景には、主力商品である手延べ麺の縮小という現実がある。特に今年は業界全体が値上げに踏み切ったこともあり、数量が大幅に伸びるのを期待するのは難しい。中でも岡山地区の主力である手延べうどんは、“時短”や“簡便”が叫ばれる現在、そうめんに比べ長いゆで時間がネックとなり減少が続いている。その中で同社はこれまで、既存品の約半分の長さしかない短い手延べ麺、調味料を添付した冷し中華や焼そばなどを発売し、簡便志向へアピールしてきた。

今回、「そもそも茹でること自体がどうなのか」との観点に立ち、新たに通販チャネル向けに発売したのが「プレミアム手延べうどん」だ。“一番おいしい状態の手延べうどん”を冷凍にしたもので、ゆでる温度、釜の湯量、急速冷凍するタイミングなど、「家で茹でた時よりも美味しくなければならない」と試行錯誤を重ね完成させた。ネックである調理時間は13分から2分へと短縮することができた。

「味には自信がある。ゆで時間が長いというデメリットをなくした時に、どう反応してもらえるか。乾麺と違い、毎日目に触れる冷凍庫にあれば消費のスパンも変わってくるかもしれない」と期待を込める。

一般量販市場へ向けても、新たな切り口の商品を投入する。山口の小麦、兵庫の塩など瀬戸内5県の素材を集結させた「瀬戸内丸五手延うどん」だ。岡山には長年親しまれている『かも川』ブランドがあるが、今回は芸術祭や物産展などを通しブランド力が高まっている『瀬戸内』を冠した。「他県へ広げる入口の商品と位置付け、将来へつなげていきたい」。

乾麺市場の将来をどうみているのか。「これまで業界全体で手延べ麺と機械麺との違いを訴求してきたが、正直伝えるのが難しいと感じる。例えば炭焼きのコーヒーがそうでないものとどう違うかというのは、コーヒー業界の人には分かっても一消費者には分かりにくい。結局は食べた人に美味しいと思ってもらえるかどうかが大事」。

「手延べというのは一つの要素だが、それ以外の要素もプラスしてより多くの人に知ってもらい、食べてもらう取り組みが必要。手延べ麺のファンを増やすためにも、その入口に立つまでの障壁を小さくしていきたい」。

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横山明一郎氏(よこやま あきいちろう)=1986年6月5日岡山県生まれ。33歳。立命館大学経営学部卒。広告代理店勤務の後、12年岡山手延素麺に入社。副社長を経て19年11月社長に就任。趣味はDIY。