アサヒビール 消費者インサイトを探索 「スーパードライ」のファン増やす

2020年のアサヒビールは長期経営方針のもと、ビールに注力する。嗜好は多様化するものの、消費者が普段から楽しむ酒類の約8割がビールであることから、接点の多いビールに注力することで特別な価値や体験の創造を目指し、また若年層のビール需要拡大に向けた取り組みを積極的に強化する。

昨年は天候不順の影響もありビール類は苦戦したが、今年は前年並みを予想する。

最近の消費行動は“モノ消費”から、経験や体験から得られる価値に重点を置く“コト消費”への移行が進んでいることから、酒類の楽しみ方についても画一的な飲用スタイル・飲用シーンではなく、各自のスタイルで個性豊かに楽しむなど、消費に対する価値観が変化。“Value”経営を推進して、どのような価値を創出し、消費者からの支持を得られたのかを重視し、中長期的な価値創出を追求する経営によって持続的な成長を図るといったことを長期経営方針に掲げる。

アサヒビール 売上目標と実績

これに基づき、今年は通年で「スーパードライ(SD)」に注力。体験価値の創出、楽しい生活文化の創造、若年層のビール需要喚起を目指し、昨年11月に「SD」の新ブランドメッセージ「ビールがうまい。この瞬間がたまらない。」を策定。今年はこのブランドメッセージに沿ったビール飲用価値の再発見と飲用体験を演出するさまざまな展開を進める。

“氷点下のスーパードライ”「エクストラコールド」では体験機会の拡大を図り、五輪エンブレムを刻印した専用タンブラーを提供するキャンペーンなどを実施。また缶を氷点下で楽しめる専用機器「SDエクストラコールド急冷機」を首都圏の一部店舗やイベント会場などを中心に約300台を展開する。

消費者がおいしさを実際に体験することが重要ととらえ、初の試みとして工場コンセプトショップを東京、名古屋、大阪の3都市で4月から期間限定でオープン。工場コンセプトカーも全国で展開する。VR技術を活用した工場見学の疑似体験などの特別な飲用体験も演出。また「鮮度実感パック」の発売回数も昨年の4回から6回に増やす。

若年層向けには昨年投入の「SD ザ・クール」で飲用体験を創出。また春の限定缶発売時に若年層に特化した広告活動を展開する。

東京五輪に際しては五輪をイメージしたデザイン商品などのプロモーションを展開するが、「五輪後に落ち込んでは意味がない」(松山一雄マーケティング本部長)といい、「五輪を通じてSDを押し込むのではなく、SDのファンを増やす」ことを目指し、「五輪をピークに持って行きたい」と話す。

新ジャンルでは「クリアアサヒ」や、好評の「極上〈キレ味〉」に加え、3月には新商品を予定。価値ある商品を投入することで、10月から始まるビール類酒税改定などの環境変化に対応する。

価値競争に重きを置く時代に「箱数の競争は意味を失っている」(塩澤賢一社長)ことから、今年からビール類の販売数量の公表を取りやめる。

ビール市場の減少については、過去にも同様の現象があったものの、1987年に「SD」発売で市場は盛り返したことに触れつつ「(最近は)ビールの良さを伝えられていなかったではないか」(塩澤社長)といい従来のように物性価値をアピールするのではなく、消費者のインサイトに踏み込んだマーケティングを展開する考えだ。