「午後の紅茶」過去最高に王手 キリンビバレッジが好調な理由

売場・生産との統合マーケが奏功

キリンビバレッジは今期(12月期)、「午後の紅茶」などが好調に推移し過去最高となった18年の飲料販売実績2億3千120万ケースを更新する見通しとなっている。

1―11月の飲料販売実績は前年同期比1%増の2億1千469万ケースとなった。

今年は紅茶飲料市場が各社から新商品が出されたことで活性化。紅茶飲料市場は1―11月累計で16%増になったと推定される。

この中でトップブランドの「午後の紅茶」は同期間、9%増の4千972万ケースに達し、同ブランド単体でも今期、5千400万ケースの大台を突破し過去最高の販売実績を記録する可能性が出てきた。

20日取材に応じた堀口英樹社長は、他カテゴリーからの流入によって紅茶飲料市場が拡大したことを評価。「当社商品一つとっても紅茶以外のカテゴリーからの流入が確認でき、裾野が広がっており今後も期待できる」と語る。

微糖の新商品で、甘さを理由に「午後の紅茶」から離れていってしまった休眠層の掘り起こしにも成功。

「ストレートティー」「レモンティー」「ミルクティー」の定番3品は小中高生など若年層からの支持が厚く、これら若年層の成長に伴い他の微糖・無糖商品に流れてしまう傾向にあった。

この防止策として今春に微糖の「ザ・マイスターズミルクティー」を発売したことで「定番品を飲んでいた方の取り込みに加えて、さらに他カテゴリーからもお客さまの流入がみられた」。

「おいしい無糖」も、カレーや各地の食材との提案を強化したことによって20%程度の伸びで推移している。

同社は今期からブランド横断で無糖領域強化の方針を打ち出し、「ファイア」では無糖ブラックコーヒーの新商品「ワンディ ブラック」が好調となった。ダウントレンドにあるショート缶コーヒー市場でも刷新した「ブラック」が健闘し、「無糖領域全体で約2割増となった」。

この無糖領域強化を含む「既存領域での成長(強固なブランド体系の構築)」の取り組みではブランドポートフォリオ戦略が奏功した。

具体的には「カテゴリーごとにポジショニングを明確にして投資配分を明らかにした。『午後の紅茶』と『生茶』にはきちんと投資し『ファイア』は例年の流れから少しポジショニングを変更して効率的に行った」という。

堀口社長が今期一番の手応えに挙げたのが組織力向上。「今年から統合マーケティングを推進し、商品の開発段階からマーケティング・営業・生産が一緒になって販売先・販促・価格を含めてつくるようにプロセスを変えて組織力を上げていった」と説明する。

一方、一番の課題に挙げたのは強固な物流体制の構築。「まだまだ運べないリスクがある。18年に中四国であれだけの大きな災害があり、当社も完全にはリカバリーできなかった」と述べる。

18年の被災による物流寸断を教訓に、今春から輸送力強化の取り組みとして物流拠点キリンゲートウェイ(KGW)の設置を進めている。

工場と物流センターの間にKGWを置くことで、車両に余裕のある閑散期に工場在庫を消費地近郊のKGWに転送し、繁忙期にはKGWからのブロック内輸送や届け先への配送に特化することが可能となる。

「長距離輸送で各地に配送していたのを改め、在庫を地域に分散させることで輸送距離を短くする。これによりコストは上がるが、清涼飲料事業を営む会社としてきちんと商品をお届けするのは社会的責任のため体制を整えていきたい」と意欲を示す。

10月にはキリンホールディングスとともに三井倉庫と共同で工場近隣に設定した原材料倉庫「門前倉庫」を活用した原材料輸送の試験運用を開始した。

門前倉庫を設置することで、原材料サプライヤーは運びたい量を運びたいときに輸送し、門前倉庫から工場までの原材料輸送も使いたいときに使いたい量を複数まとめて同時に行うことができるようになる。急な製造計画の変更にも対処しやすくなり、工場の対応力の格段の向上が見込まれる。

10月から紅茶葉、乳原材料を対象に、キリンビバレッジの湘南工場、滋賀工場を中心に試験運用を開始。来年4月には委託工場を含む全国20工場で、対象原材料を200種類以上に増やし本格稼働を予定。本格稼働後は、CO2排出を年間1千t以上(削減率約80%)、長距離輸送トラックの台数も4千台以上(削減率約63%)を削減できる見通しとなっている。

キリンビバレッジは19―21中期経営計画のビジョンに「成長による利益創出」を掲げ、「前中計に比べ成長へと軸足を移し、第1年目は大変よいスタートが切れた」。

中計2年目となる来期は「戦略のフレームワークである3つの柱は変更せず継続していく。特に今後重要になるのがCSVの観点で、CSVを基軸に経営強化していくのが大きな方向性」との考えを明らかにする。

同社は、「既存領域での成長(強固なブランド体系の構築)」「新たな領域での取り組み(将来への種まき)」「持続可能な仕組みづくり(事業基盤の強化)」の3つを事業方針の柱に掲げている。