アジアの食品流通事情 食品輸出実務と実践塾② グローバルセールス 山崎次郎氏

食品輸出の布石に

海外で小売業をしていると日本とは異なる商習慣が多々ある。まずは返品文化が。小売側の責任による汚損品や破損品は勿論、賞味期限が残り少なくなった商品も返品される。

極端な例では「初回100ケース納品。翌月100ケース納品。半年後に200ケース返品」。一定規模の小売チェーンは異なるが、店頭陳列を食品メーカーが行うケースが実は多い。

SMやデパートでは、プロモーターと呼ばれるスタッフが店頭に立っている。メーカー負担で採用した店頭販売員兼陳列要員だ。プロモーターは女性が多いが、彼女たちはメーカーの社員であり、勤務先が小売店や飲食店となっている。そのプロモーターやルートセールスの社員が陳列を行う。逆にプロモーターもルートセールスもいないメーカーの商品は、バックルームにいつまでも置かれたままで、納品しても結局すべて返品されることがある。

山崎次郎社長(グローバルセールス)
山崎次郎社長(グローバルセールス)

プロモーターとルートセールスの重要な業務の一つが発注だ。在庫を数え、店のスタッフに依頼して注文伝票(PO・ピーオー=Purchase Orderの略称)をもらい会社に連絡する。棚割りをしっかり守る意識があるのは一部のチェーン店だけ。それ以外の小売では、メーカーが発注管理と店頭管理をしっかりしないと商品が店頭からすぐに消えてしまう。ルートセールスが取引先の各店舗を回るのは、私が小売業で勤務を始めた1980年代に似ている。

マレーシアで働いていた90年代では、食品の納品率は20%ほど。00年代の台湾でも40%ほどだった。小売チェーンを10年にラオスで指導した際は20%ほどだった。納品率が低い理由は、食品メーカーが日本のように多くないため、配給制を取っているからだ。小売業は欠品を前提として注文を多く取り、メーカーは大量返品を避けるため製造数量を絞り込み、納品先を絞って製造する。

マレーシアで勤務していた96年には試験的に、1店舗で返品なしの取り組みを開始したところ、賞味期限切れの商品や汚損・破損品が大量に納品され大変な思いをした。とにかく日付の古い商品はその店に送り込めという指示が多くの食品メーカーで出されたようだ。

万引きもシンジゲートという窃盗チームが大挙して高額商品を盗みにやってくる。高額品は鍵のかかるケースに入れて販売した。日本で0.1%といわれる不明ロス率が簡単に2%や3%を越えるくらいシンジゲートは脅威となる。マレーシア本社勤務中には全社の不明ロス対策をしていたが半年の不明ロス率が6%を超えた店もあった。

プロモーターと個人的な信頼関係を築いて情報をもらい、不明ロス対策をすることが店舗管理責任者の重要な業務となるが、そんなことを知らない日本人管理職が新しく赴任すると隙だらけの店となり不明ロスが発生する。そんな繰り返しである。(②了)