アジアの食品流通事情 食品輸出実務と実践塾①

食品業界は転換期を迎えている。社会構造の高齢化、流通再編の加速化で、ビジネスモデルの再構築が求められている。中小メーカーの進むべき道として、アジア市場で長らく食品流通の実務を経験し、“日本食品を世界に売る会”を主宰するグローバルセールス(千葉県千葉市)の山崎次郎社長に、アジアの食品流通の実際、ビジネスの慣習、日本食品の輸出の実態と課題をテーマに語っていただいた。10回に分けて連載する。

食品輸出の実践のために

私は1987年から2018年までイオングループに在籍し、その間に2か国9年の海外赴任も経験した。95年には海外で初めてトップバリュの販売をマレーシアで行った。国内では00年にデイモンワールドワイド社とのPB開発プロジェクトの立ち上げメンバーとなり、03年にはグループ品質管理部の立ち上げやGFSIのアジア初・日本初の技術委員を務めた。イオンモール在籍中は日本ショッピングセンター協会の初代国際委員の一員になり、国際ショッピングセンター協会(ICSC)の日本代表も務め、最後は食品輸出事業の立ち上げも行った。

海外での小売業、スーパーマーケットの立ち上げを含め、商品開発から輸出営業・輸出実務・現地での輸入実務・店頭販売のバリューチェーンすべてを経験したキャリアを生かし、昨年からは食品メーカーに輸出や海外販売のコンサルティングをしながら「日本食品を世界で売る会」を主宰している。食品を海外に売ることについて得てきた経験を、読者の皆さんにもお伝えしたい。

日本と海外では食品の流通事情がかなり異なる。『卸』も『路線便』も海外にはない。国内でSMを開店するなら常温食品は3社でほとんど品揃えできる。グロサリーの卸、菓子の卸、菓子の地域卸の3社だ。しかし海外では数百社と直接取引しないと商品が揃わない。食品メーカーの立場で言い換えれば、多くの小売業や飲食店と直接口座を開設し取引をする必要がある。さらに路線便が存在しないので自社で各店に商品を直接配送しなくてはならない。

食品メーカーを海外で立ち上げるということは、自社配送網を整備し、小売店や飲食店と直接取引する体制や仕組みを構築する必要があるということだが、初期費用がかかり参入障壁が高い。

そうした事例から海外ではOEMが盛んではないし、商品の種類が日本ほど豊富でないのが現状で、食品製造業をゼロから立ち上げるのは日本よりもハードルが高いと言える。(①了)