市場賑わす濃縮飲料 ボトルタイプとポーションで 簡便・コスパ・カスタムニーズに対応

 簡便性・コスパ・カスタムニーズに対応して濃縮飲料(コンク)が市場を賑わしている。

 コーヒー・ティーカテゴリでは、紙やペットボトル(PET)のボトルタイプとポーションがともに拡大している。

 サントリー食品インターナショナルは濃縮飲料「割るだけボスカフェ」を「クラフトボス」ブランドの傘下に入れて「割るだけクラフトボスカフェ」へと刷新し現在9フレーバーを基本商品として展開している。

 ネスレ日本は今年、PET入り濃縮タイプ飲料「ネスカフェ エスプレッソベース」2品を新発売して、多様化するアイスコーヒー需要に対応している。

左から「ネスカフェ エスプレッソベース」の「甘さひかえめ」と「無糖」、手前がアレンジドリンク
左から「ネスカフェ エスプレッソベース」の「甘さひかえめ」と「無糖」、手前がアレンジドリンク

 同商品では主にカスタムニーズを獲得すべく訴求。2品を使ってアレンジして作る50種類のアイスドリンクを「ネスカフェ」ブランドサイトで公開し、50種類のうち16種類を直営店・ネスカフェ原宿(東京都渋谷区)の期間限定メニューとして提供した。

 20代後半から30代のコーヒーライトユーザーの獲得がアレンジレシピ提案の狙い。
 取材に応じた飲料事業本部液体飲料ホワイトカップ&ミロビジネス部の吉岡修平ブランドマネージャーは「気候変動に合わせて多くの方々がアイスコーヒーを飲まれている。特に20‐30代の方々は、カフェでブラックコーヒーではなく、フローズンドリンクや新たなアレンジメニューでアイスコーヒーを楽しまれている。コーヒーのブラック・ホワイトという枠組みを超えて多様な飲まれ方が広がっている」との見方を示す。

 飲み方の多様化や暑さを感じる期間の長期化を背景に、濃縮コーヒー市場が拡大していることにも着目する。
 インテージSRI+によると、同市場は金額ベースで2020年から24年までの4年間で約1.5倍に拡大した。

 濃縮コーヒー市場では、小川珈琲の「京都 小川珈琲 炭焼珈琲 カフェオレベース 無糖」や伊藤園の「TULLY’S COFFEE ESPRESSO BASE 」も好調に推移しているとみられる。

左から「ネスレ ポーション 宇治抹茶ラテ」「ネスカフェ ゴールドブレンド ポーション 甘さひかえめ」
左から「ネスレ ポーション 宇治抹茶ラテ」「ネスカフェ ゴールドブレンド ポーション 甘さひかえめ」

 ネスレ日本は、「ネスカフェ」と「ネスレ」のポーションも強化している。
 ポーションは濃縮飲料の一形態で、コーヒーやティーのアイスメニューが一杯分ずつ簡単にできるのが特徴。

 常温保存が可能で、コンパクトな個包装タイプのため置き場所も選ばず、その手軽さから自宅にいながらカフェメニューが楽しめて幅広い世代に支持されているという。
 特に一杯分ずつ開けたての味わいが楽しめるという点でボトルタイプのコンクとも異なる価値を有しており、さらなる成長余地を見込む。

 ポーションはそもそも春夏の季節商材であったが、温暖化や市場拡大の影響を受けて、通年販売する売場が増えつつあるという。

 同社は、カフェで人気のラテメニューに注目し、ポーション1つでラテが簡単においしく作れることを“スマラテ”と称して提案。冷たい牛乳や豆乳、アーモンドミルクなどと割って様々なラテメニューが楽しめることを、“スマラテ”のアイコンとともに店頭・SNS・キャンペーンを通じて発信している。

 新商品は3月1日に発売開始した「ネスレ ポーション 宇治抹茶ラテ」。砂庭と石畳の2種類のパッケージデザインを取り揃える。

「ブレンディ」ポーション
「ブレンディ」ポーション

 濃縮飲料市場の中で、ポーション市場創造へ本腰を入れるのは味の素AGF。AGFは、スティックなどと並ぶカテゴリに拡大すべく、商品を拡充するとともにポーションの魅力を生活者に伝達することを強化している。

 温暖化が続くとの見立てに加えて、アイスの飲用スタイルが、コーヒーエントリー層である若年層からも好まれる傾向にある点に勝算を見込む。

 加えて、コーヒー豆が歴史的に高騰する中、コーヒー豆を最大限活用できるカテゴリの1つとしても注目する。

 「コーヒー豆をできる限り絞り取って、多くの杯数に還元していくという点では、レギュラーコーヒーよりもパウダー、濃縮エキスの品揃えにフォーカスしながらビジネスを展開していきたい。加えて単なる個包装ではなく、体験の場を通じて一杯の価値を高めていきたい」と中澤正規執行役員は語る。

 春夏にかけて、“Let’sポーション”をコミュニケーションワードに掲げ、ポーションの魅力を生活者へ伝える施策を実施。榮倉奈々さんを起用し「ブレンディ」ポーションで初のTVCMも放映開始した。

左から「オリジナルミルクティーベース」と「オリジナルチャイベース」
左から「オリジナルミルクティーベース」と「オリジナルチャイベース」

 ティーにフォーカルして濃縮飲料にアプローチしているのは三井農林の「日東紅茶」ブランド。2月、同ブランドの「ロイヤルミルクティーベース」を大刷新した「オリジナルミルクティーベース」と新商品「オリジナルチャイベース」を発売開始した。

 気温上昇や夏の長期化に伴い売場においても夏商材の長期展開・ラインアップの拡充が求められることと、猛暑を自宅で快適に過ごすためのアイテムに勝算を見込む。

 三井農林企画本部商品企画・マーケティング部商品企画第一室の河村玲奈氏は「2024年の夏休みの過ごし方に関するアンケートでは“家でのんびり過ごす”がトップとなり、猛暑をお家で快適に過ごすためのアイテムにチャンスがあると見込んでいる」と語る。