缶コーヒー復権の兆し「タリーズコーヒー」2ケタ増 ボトル缶は圧倒的No.1の回転 チルドの新領域でも手応え 伊藤園

 伊藤園の「TULLY’SCOFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドが好調に推移し“缶コーヒー復権”の兆しをみせはじめている。

 「タリーズコーヒー」の21年1-12月販売実績は前年比約11%増。

 ボリュームの大きい旗艦アイテムのロングサイズ・ボトル缶「TULLY’SCOFFEEBARISTA’SBLACK(タリーズコーヒーバリスタズブラック)」(390ml)が回転で圧倒的No.1を維持して約10%増を記録。そのほかのボトル缶やショート缶「バリスタズエスプレッソ」も前年を上回った。

 直近の状況について、取材に応じた井上信一マーケティング本部新ブランド育成コーヒーブランドグループチーフは「当社決算期(4月期)でみると、19年5月~20年2月と21年5月~22年2月の比較では、ほぼコロナ以前の水準に回復した」と振り返る。

伊藤園の井上信一マーケティング本部新ブランド育成コーヒーブランドグループチーフ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
伊藤園の井上信一マーケティング本部新ブランド育成コーヒーブランドグループチーフ

 今年は、過去最高となった17年販売実績を目指しつつ、原材料高騰など先行きが見通せない環境を踏まえて既存の定番品に徹底して注力していく。

 「1日に2、3本ご購入下さるお客様を大切にしていきたい。コーヒー生豆の国際相場が高騰し、レギュラーコーヒーを抽出する設計が中心となる我々に大きな打撃を与えている。だからと言って品質を落とすことなく、満足していただけるものをきっちり作り続ける1年にしていく」とひきしめる。

 「バリスタズブラック」(390ml)は「コクや苦みを求めるお客様が、ペットボトル(PET)コーヒーでは物足りなさを感じられて、PETコーヒーから戻ってきている傾向にある」という。

 その逆の動きもあり、ブラックコーヒーに求められる味わいの二極化がより鮮明になってきていると指摘する。

 その上で「コク深さや苦み重視の方とスッキリした味わいを好まれる方のどちらが今後増えていくのか慎重にみていく必要がある。スッキリのほうに拡大余地がある場合は、そこに対して『バリスタズブラック』以外の商品を強化していかないといけない」と語る。

 スッキリ系への布石としては、昨年11月に新発売した少量サイズのボトル缶「FeatherBlack」(235ml)が挙げられる。

 同商品は、羽(Feather)のような軽やかな口当たりと深いコクが感じられることを謳ったブラックコーヒーで「香料を使わずにコーヒー本来の香りを引き出しつつスッキリさせられたことに可能性を見出したため今秋に向けて引き続きチャレンジしていく」。

 そのほかブラックコーヒーで細分化されたニーズにも引き続き対応していく。
 コクもありながらスキッリで香りも評価されている285mlボトル缶の「キリマンジャロBLACK」は自販機の装填を強化する。

「TULLY’SCOFFEEBRISTA’S(タリーズコーヒーバリスタズ)無糖ラテ」(右) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「TULLY’SCOFFEEBRISTA’S(タリーズコーヒーバリスタズ)無糖ラテ」(右)

 同社が広義のブラックコーヒーと位置付ける370mlボトル缶の「TULLY’SCOFFEEBRISTA’S(タリーズコーヒーバリスタズ)無糖ラテ」も好調だ。

 「バリスタズ無糖ラテ」は昨年、大手コンビニに年間採用されたことが奏功して21年販売実績は前年比約60%増となった。
 「ラテではなく、まろやかな無糖を飲みたいというニーズを獲得して、競合品を含めてブラックコーヒーユーザーに買い回っていただいている」とし今後この流れを加速していく。

 ラテ系では自販機展開している220mlボトル缶「バリスタズカフェラテ」が好調に推移している。

 「タリーズコーヒー」では、ブラックコーヒーを中心とした定番商品に磨きをかけることに重きを置きつつ、日本茶ラテ(和風ラテ)やホームカフェの新領域にも触手をのばす。

 日本茶ラテは、「コーヒーの分野から少し広げて、タリーズコーヒーのショップの雰囲気・世界観を楽しんでいただくことを目的にショップのメニューに準じて開発していく」との考えのもと、ペットボトルで1月17日に「TULLY’SCOFFEE(タリーズコーヒー)ほうじ茶ラテ」(485ml)を新発売し、続いて3月28日に「同 抹茶がおいしい抹茶ラテ」(480ml)を新発売する。

左から「TULLY’SCOFFEE(タリーズコーヒー)MYHOME BLACKCOFFEE」「同 微糖COFFEE」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左から「TULLY’SCOFFEE(タリーズコーヒー)MYHOME BLACKCOFFEE」「同 微糖COFFEE」

 チルドは、大容量シリーズ「同 MYHOME BLACKCOFFEE」「同 微糖COFFEE」 と小容量シリーズの「同 エスプレッソウィズミルク」(330ml紙)、「同 ハニーミルクラテ)」(同)をラインアップ。
 春夏は大容量シリーズ、秋には小容量に注力する予定。

 大容量シリーズは「BLACKCOFFEE」が家庭内需要を獲得し好調。
 「家族で飲まれることを想定したクセのないバランスのよい味わいが奏功したと考えている。1Lのホームユース市場の中では高価格だが、ショップブランドということで、おいしいコーヒーを求める層にトライアルしていただきリピートにつながっている」と分析する。

 なおブラックコーヒーの味わいの二極化について、コロナ禍で多様化したストレス発散のあり方が影響していると指摘する。
 「缶ビールと缶コーヒーのユーザーは重なるところが多く、缶ビールでは苦味のない香りを強調したビールが拡大している。缶コーヒーも同様で、ストレスをコクなどの強さで解消しようとする心理と、柔らかい味わいで脱力することで解消しようとする心理が働いているのだとみている。これからは性年代の縦軸ではなく、このような横軸で市場をみていく必要がある」との見方を示す。

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