今回の連載は海外に「何を売るか」の深掘りだと前回説明したが、「誰に売るか」「どうやって売るか」に興味がある方が圧倒的に多いだろう。そこで今回からの2回で、この2つを説明しておきたい。
私は食品の海外商品開発支援の顧問を多数担当しているが、その経験も踏まえてお伝えしたいのは、輸出営業に取り組む前に準備すべき必要な資料が9つあるということだ。新型コロナ明けからすぐに動きたいのであれば、この事前準備は不可欠だ。
なお、資料をすべて整えるには海外営業担当者だけでは作成できない。商品開発担当者や品質管理担当者の協力が必要となるし、教育も必要となる。そのために「食品輸出実務と実践塾・Eラーニング」を開講しようと考えたわけである。
順に説明しよう。
①「FOB価格と現地C&F価格での見積もり」。輸出諸掛りを極限まで下げた状態の見積もりである。両方が必要な理由は、購入者は船賃を安く手配できるほうで買いたいからだ。さらに輸出商社のためにEXW(倉庫渡し価格)を製造工場渡し価格として準備しておく必要がある。
②「輸出営業用資料」。購入者が必要とする情報をすべて記載している必要がある。最低限でもJANコード・荷姿の縦横高さのcm・荷姿の㎥・荷姿の㎏・販売期間・製造都道府県の情報が必要であり、英文、写真付きで作成する。これがないとコンテナ内で数量を最適化した発注ができない。
③「国内用輸出取引契約書」。輸出商品を国内で流通させないための契約書だ。本格的に商品を輸出するなら必ず海外専用パッケージが必要となる。海外に対応し設定した販売期限を表示することになるが、それが日本国内で販売させないための契約書だ。
④「圧倒的に売手が強い海外企業との売買契約書」。しかも輸入リスクは、輸入者がすべて負担する内容のものが望ましい。よくあるのは、この直接貿易用の売買契約書を後から作ろうとする。だから不利な条件で話が進んでしまう。
しっかりした輸出売買契約書の作成は時間がかかる。ジェトロでは輸出実務経験者(TOEIC600点以上)に11週かけ「売買契約書作成」勉強会を開催しているが、それでは時間がかかりすぎる。「食品輸出実務と実践塾・Eラーニング」上級編では雛型(日本語と英語)を解説し、すぐに使えるものを提供する予定だ。
⑤「海外売掛取引を可能にする保険加入」である。海外PL保険・輸出取引信用保険など必要な準備を終えておく。この保険もどんな保険にどこでどうやって加入すれば一番良いか解説する予定だ。
⑥「食品添加物(INSコード入り)情報の入った原料構成表」の英文資料である。これがないと輸入できるか否かディストリビューターも輸出商社も判断ができない。
⑦「製造工程表」の英文版。
⑧「HSコード」。輸入者が現地で販売するには関税を事前に把握する必要がある。それに必要となるのがHSコードだ。
⑨「食品安全のグローバルスタンダード認証の有無の説明準備」である。GFSIが認定している食品安全第三者認証の有無である。取得していなくても先方の監査を得ればよいだけだが、中間に入る企業が食品安全のグローバルスタンダードに関する理解が乏しいケースも少なくない。そのため事前に資料を作成しておく。以上の資料を事前準備せず、海外営業を開始すると成果は出ない。
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