アイス・飲料で独自展開
ポッカサッポロフード&ビバレッジの子会社、沖縄ポッカコーポレーションとフォーモストブルーシールの2社が沖縄の地に根ざしたマーケティング活動を展開している。沖縄は人口、観光客数ともに増加傾向にあり、特に観光面では今後も高い成長が見込まれる。航空路線とクルーズ船寄港回数の拡充・増加に加え、今後は那覇空港第2滑走路増設や沖縄都市モノレール線延伸が実施。ホテル、商業施設なども次々と建てられる見通しとなっている。さらなる活性化が見込める中、2社の戦略について訊いた。
フォーモストブルーシール 『沖縄の“ソウルアイス”』
店舗拡大し県民の支持強固に
沖縄業務用アイスで首位 県内の直営店出店に意欲
沖縄県が発表した国勢調査によると、沖縄県の人口の伸びは80年以降鈍化しているものの、15年の沖縄県人口は10年比3%増の約143万人、世帯数は同年比7・6%増の約55万9千世帯と依然増加傾向にある。
観光客数も増え続け、15年度入域観光客数は10・7%増の793万人を記録し3年連続で国内客・外国客ともに過去最高を更新。15年は円安効果もあり外国客が69・4%増と高い伸びを示した。
こうした環境下で、沖縄県民に愛されることを主眼に「20年に向け“チャレンジ2020”を策定。ホテル、空港を重点チャネルとし県内どこにでもある状況をきちんとつくっていく」と意欲をのぞかせるのはアイスクリーム会社・フォーモストブルーシールの水田正明社長。
店舗数は、県内に直営7店舗、県内と県外にフランチャイズ(FC)11店舗の計18店。小売商品は沖縄県内の小売店に高い配荷率で導入しているが「組織小売業さまとのお付き合いを大切しつつ、今後伸ばすべきは直営店であと3店舗開業したい」とし、沖縄本島中東部の西原町に建設決定した大型MICE(国際会議場など)やサンエーとパルコが協力して浦添市に建設する沖縄県内最大級の複合型商業施設などへの出店を狙う。
現在、県内業務用アイスのシェアは、同社が首位でB-R サーティワン アイスクリームとせめぎ合っているという。
県外のFC店舗は、全国に分散していたのを関東に集約していく。「配送や原材料の手配などを考えると効率的に20店舗は必要。いい物件があれば直接見に行く」考えだ。
一方、小売商品は「採用アイテム数にバラつきはあるがベンダーさんを通じ県内ほぼ全てのCVSさま、量販店さまに採用されている。これに加えて約700店舗に直販している」。
全国に配送可能なギフトは4月、100以上の商品を4品に集約。具体的には「12個入りとその倍の24個入り、18個入りとその倍の36個入りというようにセットアップを2通りにしたところ、間違いや在庫管理がなくなり非常に効率が上がった」。
米軍施設で創業 県内の小学校に毎年提供
フォーモストブルーシールは、アイスクリームの販売・店舗運営を手掛ける会社で、48年、米軍施設(うるま市天願)の中で創業。当初は、米国に本社を置くフォーモスト社のミルクプラントとして沖縄に駐留する米軍関係者に乳製品を供給。アイスクリーム会社としての歴史をスタートさせたのは63年で、インターナショナル・デアリーズ(琉球)を設立し浦添市牧港に第一号店を開店した。
その後、沖縄の本土復帰から4年後の76年に現社名へと変更し96年にポッカサッポロフード&ビバレッジ(当時ポッカコーポレーション)の傘下に入った。
戦後、牧港本店が観光の定番スポットとなるなど「アメリカ生まれ、沖縄育ち」という沖縄の戦後の歩みを象徴する企業として認知が拡大。県内全ての小学校では、毎年7月の終業式にブルーシールのアイス計12万個が生徒に配られるなどハレの日のアイスとして定着している。
この勢いを加速させ、さらなる発信強化と次世代ファンの獲得を狙い、牧港本店に併設して体験型ミュージアム「ブルーシール アイスパーク」が9月にオープンした。出足は好調で、週末や祝祭日には体験の予約が取りづらくなるほどで、11月2日から営業時間を延長した。
ミニプラントで新展開
アイスパークでは、オリジナルアイスバーづくりや冷凍庫体験ができるほか、ヒストリーゾーンを設置。ヒストリーゾーンは、数百点の未公開資料の洗い出しや創業当時の従業員らへの取材を経てつくられ、パネル展示などで48年から現在までの歩みや沖縄県民とブルーシールの関係性が理解できる内容となっている。
同施設には小ロット多品種製造のミニプラントも設置し、これにより季節限定品などへの対応が可能。沖縄県特産品を切り口にしたBtoBの可能性もあり、これについては「南大東島はかぼちゃの産地。当社がかぼちゃを使ったアイスを製造し南大東島で“南大東島×ブルーシール”のようにして売ってもらうと、他でも広がる可能性がある」(山田伸治取締役総務経理部部長兼マーケティング部部長)と期待を寄せた。
メインとなる定番品や新商品は、過去から受け継がれている“オレンジレシピ”をもとに製造。売れ筋は「バニラ&クッキー」「塩ちんすこう」「ストロベリーチーズケーキ」の順となっている。
定番品などの大ロット製造は、本社(浦添市牧港)から至近の場所にある沖縄明治乳業との合弁会社エムアンドビーが手掛けている。エムアンドビーの年間生産量は3千800t。そのうち6割がブルーシール商品で業務用アイス、カップ・ソフトアイス、サンドアイスを製造している。
主な製造工程は、調合1日、充填1日の2日間がかりで製造。「調合した原料を夜中にエージング(熟成)し、その間、細菌検査も行う。翌朝、検査結果を確認し充填作業に入る」(西野晃生エムアンドビー常務取締役・フォーモストブルーシール取締役)という。
調合液は、フリーザーでマイナス3、4℃へと冷やされ固められるが、同工場の特長はこのフリーザーを県内最多の5台を保有している。稼働は夏場の繁忙期を除き1シフト(8~17時)制。「製造品種は毎日異なり、カップ商品は2時間の中間洗浄を挟み午前と午後で異なる」。
|
|