安藤百福賞 冨田慶大教授に大賞 データサイエンスの礎築く

公益財団法人安藤スポーツ・食文化振興財団(理事長・安藤宏基日清食品ホールディングス社長・CEO)が主宰する「食創会~新しい食品の創造・開発を奨める会~」(小泉純一郎会長)は7日、都内のホテルで2022年度食創会「第27回安藤百福賞」表彰式を開催。大賞(賞金1千万円)に選ばれた冨田勝慶應義塾大学先端生命科学研究所・所長兼環境情報学部・教授をはじめとする受賞者を表彰した。

同賞は、故安藤百福氏(日清食品創業者)が私財を投じて創設した「安藤百福記念基金」(平成6年創設)を原資に、創造的・革新的な食品の基礎的研究、生産・加工技術の開発や健全な食生活の創造に寄与し、食品産業の向上・発展に貢献すると認められる個人(原則)を表彰するもので、今回で27回目。

大賞の受賞テーマは「システムバイオロジーの先駆研究と食品産業への貢献」。冨田氏は先端生命科学研究所が立地する「鶴岡サイエンスパーク」(山形県鶴岡市)をシステムバイオロジーの世界的拠点へと発展させ、Spiberをはじめとするベンチャー企業の創業や食品産業に貢献する研究者を多く育成してきた。また食科学の領域でも栄養、おいしさ、機能性に関する遺伝子や代謝物を網羅的に計測・解説する最先端研究を推進し、今後の食科学研究の中心となるデータサイエンスの礎を築いたことが評価されての受賞となった。

表彰式に先立ち会見した冨田氏は「システムバイオロジーとは、バイオにITを駆使する、と考えていただければいい。これを食品産業に応用し、様々な面白いことに取り組んでいる。私は2001年に、先端生命科学研究所の所長に任命されたが、以来、所長としてやってきたことは、学生や若手スタッフが面白くてワクワクするような、そういう環境、文化、風土をきちっと作ること。『それって普通だよね』と言われたら全否定を意味する。そういう文化を作ってきた。それが若手、中堅、学生をインスパイアし、ものすごく面白いベンチャーがいくつもできている」と成果を語った。

なお、「優秀賞」(同200万円)には新潟薬科大学の高久洋暁応用生命科学部・学部長兼教授による「油脂自給率向上を目指した微生物による地域バイオマスからの日本型油脂発酵生産システムの開発」、東北大学大学院の山本雅之医学系研究科・教授による「植物栄養素ファイトケミカルによる抗酸化生体防御作用の分子メカニズム解明」の2人、若手研究者や中小企業の開発者を対象とした「発明発見奨励賞」(同100万円)には、京都大学大学院農学研究科・助教の小栗靖生氏(受賞テーマ・ベージュ脂肪前駆細胞を標識する新規分子マーカーの発見と革新的な機能性食品開発への応用)、九州大学大学院農学研究院・准教授の田中充氏(受賞テーマ・食品成分の高度可視化技術の開発と食機能・品質評価への応用)、東北大学大学院医学系研究科・非常勤講師ヘルムホルツセンターミュンヘン・客員研究員の三島英換氏(受賞テーマ・食品成分ビタミンKの新たな作用としてのフェロトーシス抑制作用の発見)、有限会社三陸とれたて市場代表取締役の八木健一郎氏(受賞テーマ・高品質の冷凍刺身「盛るだけお造り・天然旬凍」開発による三陸地域の活性化)の4人が選ばれ、小泉食創会会長から表彰を受けた。

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