【インタビュー】ローソン竹増社長 2023年市場見通しと来期重点施策を語る 思い描くコンビニの未来像とは?

 ローソンの竹増貞信社長は食品新聞の取材に応じ、2023年市場見通しや来期重点施策について以下の通り語った。思い描くコンビニの未来像についても触れた。

――昨年を振り返ると。

竹増 2022年はコロナ禍で港湾の人手不足起因による世界的な物流コスト上昇に始まり、ロシアのウクライナ侵攻による原油などのエネルギーや小麦などの農産品価格の大幅上昇、日米金利差拡大による円安が進行し物価が大幅に上がった。
 値上げの波が続き、お客様の生活防衛意識は更に高まる一方、行動制限の解除で、コロナ前のように旅行やレジャーを楽しみ、“欲しいものには適切な対価を払う”という二極化の流れが進んでいる。
 コロナ下のコンビニで定着したのは、スーパー代替としての商品の購買ニーズ。具体的には近場でのまとめ買いやデリバリーサービスなどが挙げられ、それらは行動制限が解除された現在でも好調に推移している。 
 テレワークや家呑みなど行動様式も継続しており、その対応も重要と考えている。

――ローソンの状況は。

竹増 「ローソングループ大変革実行委員会」の主要活動である「店舗理想形追求プロジェクト」「厨房プロジェクト」「商品刷新プロジェクト」「無印良品導入プロジェクト」の各プロジェクトが奏功して22年度上期(2月期)の国内コンビニ事業の既存店売上高前年比は102.4%、客単価前年比は102.3%、客数前年比は100.1%という結果となった。
 足元では10月の既存店売上高前年比は105.7%となり、日販は2019年度を上回り、確かな手ごたえを感じている。
 これには、22年6月に始動した25年の創業50周年に向けた新プロジェクト「ハピろー!(ハッピー・ローソン・プロジェクト!)」による販促施策やローソンならではの商品発売、サービス開始などが寄与した。

――コストアップについて。

竹増 価格の高騰は23年前半までは続くと考える。今後は、価格にシビアなお客様がより増えることが想定され、スーパーやドラッグストアに限らず価格競争は激しくなるとみている。
 ローソンとしてはPBなどの独自商品をさらに磨き、商品価値をより高めていくことが必要と考えている。価格に関しては単なる値上げではなく、付加価値をつけてお客様にご納得いただけるような商品改変と、生活必需品として価格を維持する商品(PBの調味料、素材食品など)などバランスをとり対応していく。

――今年の市場見通しは。

竹増 2023年は世界的なインフレの影響を受ける可能性があるものの、日本国内ではサービス消費・インバウンド消費が緩やかに回復していくとみている。インフレ下の社会で顧客が求める価値に対応した商品・サービスを提供し続けることが求められ、スピードを持って対応することが重要となってくる。
 コロナ前とコロナ後をあわせたハイブリッド社会となることも想定している。デジタル活用や、タイムパフォーマンス・実質重視といった生活者の意識変化にいかに対応していくかが鍵となる。近場での買い物、デリバリーなどコロナ下で生まれたニーズとコロナ前の人流に合わせたニーズの双方を取り込めれば大きなチャンスとなる。

――来期の方針・重点施策は。

竹増 引き続き大変革実行委員会のプロジェクトを進め、お客様、社会から「レコメンドNo.1」を獲得して新しい便利を追求した「新・マチのほっとステーション」を創りあげていく。
 重点施策としては、各エリアや立地に合った商品、サービスを提供する「ローカライズ」や「個店主義」の取り組みを加速させる。
 さらに、お客様ひとりひとりの声を聞いて、一店一店をそのマチに合わせるといったパーソナライズもさらに推進していく
 これまでコンビニは全国的に標準化する事で成長を続けてきたが、さらに成長するためにはローカライズを推進して、日常生活に入り込む必要がある。
 例えば、東京の六本木でも大通りから1本入ると、お一人で暮らしているシニアの方が
多くいらっしゃる。エリアだけでなく、その店ごとの品揃えが必要だ。
 その取り組みをさらに推進するため、22年には戦略コンセプトである「地域密着×個客・個店主義」の一環として、エリアカンパニー制を導入し、先行地域として「北海道カンパニー」、「近畿カンパニー」を新設した。
 本社決裁を通さずエリアカンパニー内で完結するため、意思決定のスピードが高まり、独自の商品を仕入れた店舗や地域の素材・食材を使った商品開発、地域の木材を店舗建設に使用するなど活発な動きが出ている。
 コロナ禍の隔離期間を経たからこそ、人とのつながりが大切になってくる。これが私が思い描くコンビニの未来像であり、リアル店舗を全国にもつローソンとして、改めて「人と人とのつながり」をつくっていきたいと考えている。
 その考えを具現化する近未来型店舗として昨年11月にグリーンローソンをオープンした。
 ここでは、人とつながるためにロボット工学を推進しているという大阪大学の石黒先生の考えに共鳴し、アバターを導入。リアル店員の代わりにアバターがレジ操作サポートやおすすめ商品ご案内することで、省人化を行いながらも温かい接客が実現できている。
 DXで生産性を向上させ、余ったマンアワーを店のホスピタリティに充てることで、店舗に人々が集える、昔ながらの商店街のような温かいヒューマンタッチを大事にできるお店づくりを進める。
 グリーンローソンでは、冷凍食品と店内厨房で作る出来たて商品でフードロス削減に取り組んでいくほか、要冷機器に扉をつけてことによる消費電力・CO2の削減、レジ袋・カトラリーを無くすなどプラスチック削減にも取り組んでいく。
 SDGsは全世界で皆が取り組むべき目標であり、達成に向けた取り組みは、我々が事業を行う上での最低条件となる。全国に展開する店舗を通してお客様、マチと一緒に取り組んでいきたい。

EU農産品  - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)