生活習慣病や老化の加速を無症状で引き起こす“万病のもと”慢性炎症 その抑制策の1つはお茶 伊藤園がフォーラム開催

 無症状で生活習慣病や老化の加速を引き起こし“万病のもと”とされる慢性炎症。
 その抑制にはお茶の飲用などが有効であることから、伊藤園は6月24日、専門家を招きフォーラムを開催し慢性炎症の実態と予防・改善方法を紹介した。

 炎症とは、体内の異物や異常な状態を取り除きカラダを元の状態に戻すための防御反応で、咽頭炎・口内炎・皮膚炎などの急性炎症は症状が出てから短時間で収まるのが特徴であるのに対し、慢性炎症の多くは無症状で炎症が長期にわたって収まらず免疫の暴走などを招くとされる。

 脳梗塞・動脈硬化・がん・糖尿病は、免疫が暴走し過度に活性化した免疫細胞から放出された物質が全身に飛び火し各所で慢性炎症を引き起こすことで進行していく。

パネルディスカッションの様子。左からモデレーターの大橋毅夫氏、静岡県立大学食品栄養科学部の合田敏尚特任教授、九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門食料化学工学講座食糧化学分野の立花宏文主幹教授、伊藤園中央研究所の衣笠仁所長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
パネルディスカッションの様子。左からモデレーターの大橋毅夫氏、静岡県立大学食品栄養科学部の合田敏尚特任教授、九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門食料化学工学講座食糧化学分野の立花宏文主幹教授、伊藤園中央研究所の衣笠仁所長

 慢性炎症の原因の1つが肥満であることから、静岡県立大学食品栄養科学部の合田敏尚特任教授は、慢性炎症の兆候を捉える方法として体重と腹囲の測定を挙げる。

 「腹囲はご自身でもベルトの緩み具合で把握できる。ある程度、毎日、どのくらいになっているのかを見ていくと肥満予防にかなり効いてくる」と語る。

 慢性炎症には、特に内臓脂肪に含まれる脂肪細胞が関係している。

 内臓脂肪型の肥満は男性に多く、動脈硬化のリスクをはらみ「生活習慣病がどんどん進んでいく極めて危険なもの」とされる。

 慢性炎症は一度発症すると増幅される。

 内臓脂肪が多くなると脂肪細胞も大きく膨れ、そこにマクロファージなどの免疫細胞が過剰に集まり、マクロファージはサイトカインと呼ばれる炎症を誘発する物質が放出して仲間(マクロファージ)を呼び寄せる。
 サイトカインは血管を通じて全身に届けられ、動脈硬化など様々な疾患を引き起こす。

 動脈硬化は、サイトカインで集まったマイクロファージが悪玉コレステロールを食べ過ぎて死んでしまい、その死んだマイクロファージがコブになり、さらに炎症を引き起こすことで生じる。

 糖尿病のリスクについては「内臓脂肪が肥大化して異常になると、インスリンが上手く効かなくなり血糖のコントロールができないグルコース(ブドウ糖)を取り込めない細胞になる。サイトカインがたくさん出ることで脂肪細胞以外の骨格筋や肝臓にも作用してインスリンの効きが全身で悪くなり血糖の上昇が起こり糖尿病のリスクが上がってくる」と指摘する。

 血糖値の平均だけではなく、血糖値が急激に上昇する食後高血糖にも警鐘を鳴らす。

 食後高血糖とは、食後の血糖値が急激に上昇し、血糖値スパイク(ピーク値)が異常に高い状態のことで、早食いやドカ食いなどで引き起こされる。

 「ドカ食い、あるいは夜遅い時間に食事をとることを習慣づけると非常に効率よく脂肪を蓄積してしまうことがある」と述べる。

 このことから、空腹時に行う健康診断では、正常と診断されて発見されないことがあり、また若い人や痩身の人がなることもある。

 食後の血糖値が急激に上昇すると、白血球が過度に活性化してサイトカインを放出し糖尿病の発症やその合併症の進行を加速させる。

 その際、緑茶に含まれるガレート型カテキン(EGCG)を糖と一緒に摂取すると、白血球の過度な活性化とサイトカインの過剰な放出が抑制され脂肪組織・動脈などの慢性炎症も抑えられる。

具体的には、EGCGがマクロファージや血管内皮細胞の表面にあるカテキン受容体・67LRに結合し、いくつかの物質を介してマクロファージが炎症を誘発するサイトカインを放出するのを抑える。

 この仕組みについて、九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門食料化学工学講座食糧化学分野の立花宏文主幹教授は「67LR自体も大事だが67LRからの信号がきちんと伝わるということが物凄く大事。信号の流れをよくさせてEGCGの効きを高めるのが、緑黄色野菜に多く含まれるビタミンAのもととなるβカロテン、あるいは柑橘ポリフェノールやネギ科植物に多く含まれるニンニクのような成分となる」と説明する。

 アンケート調査では、睡眠の質が67LRからの信号の流れに影響を与える可能性も明らかにされた。

 緑茶カテキンは、ポリフェノールの一種で緑茶の渋味の素となる。複数種類ある緑茶カテキンのうち、EGCGは、緑茶にしか含まれていない特有の成分となる。

 立花主幹教授は、EGCG 以外で67LRに結合するものとして、烏龍茶特有のポリフェノール(ウーロン茶重合ポリフェノール)と、チョコやワインに多く含まれるプロシアニジンC1(3量体)を挙げる。

 合田特任教授は、糖尿病予防について、肥満にならないための運動と食事のコントロール、食事で血糖値が上がってしまった際のお茶の飲用を推奨する。

 食事については「量をとっても構わないので、血糖値を上げにくくするような食事に切り替える。多くの場合、血糖値の上昇は穀物からくるため、穀物の消化吸収速度を下げる工夫をする。パンであれば全粒粉を使い、お米の場合は大麦を少し加えることによって、糖質の省吸収速度を抑制する。魚にも炎症を抑制するn-3脂肪酸がある」との見方を示す。

 お茶の飲用量は、緑茶飲料で1日1L程度(4~5杯)を推奨。ただし「緑茶カテキンの濃度を上げていくと、逆に炎症が抑えられなくなることがあるので適量があると思う」と述べる。

 冒頭挨拶した伊藤園中央研究所の衣笠仁所長は、生活習慣病がドミノ倒しのように進み脳卒中や認知症など様々な病態を引き起こすことを意味するメタボリックドミノに触れ「肥満がドミノ倒しのスタート地点」と注意を促す。

EU農産品  - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)