「何かあったらすぐ動く」東北復興に貢献 災害支援体制強化、食品事業を拡大 アイリスフーズ山田次郎社長

アイリスオーヤマの食品事業を担うアイリスフーズは、東日本大震災を受けて大地震発生から2年後の13年に設立された。仙台に本社を構える企業として東北の被災地に貢献していくことが設立の目的。

設立から7年――。

その進捗について、取材に応じたアイリスフーズの山田次郎社長は「精米事業に参入して東北のお米を中心に扱っていたが、一番貢献できたと感じているのは舞台アグリイノベーションを設立したこと。舞台アグリイノベーションを通じて、当社が南相馬市小高区のお米を全量買い取りすることで、福島の方が安心してお米を生産できるようになった」と語る。

グループ企業で精米業を営む舞台アグリイノベーションが、直接農家から玄米で集荷して低温自動倉庫で保管。さらに低温環境での低温精米機による精米・低温梱包を行い、そうしてできたコメをアイリスフーズが買い取って全国に販売。アイリスフーズではそのコメを原料にしたパックごはん(包装米飯)などの製造・販売も行っている。

アイリスフーズが需要創造することで、農家の生産量を増やし自助の形で支援につなげていくのが狙い。

アイリスフーズ設立以前、ホームセンターやドラッグストアを主戦場としスーパーのネットワークは少なかっため、最初の2年間は販路開拓に苦戦を強いられたものの、突破口を開いた15年頃から右肩上がりで成長。2020年12月期アイリスオーヤマ食品事業(アイリスフーズ)の売上高は前年比33%増の200億円を記録した。

これに伴い福島県沿岸部の生産量も拡大。「17年は連携農地面積が11 haで生産量は66t。生産量は毎年数倍ずつ増えている。舞台アグリイノベーションの亘理(わたり)工場では被災者の方を数十名雇用した」という。

商品は、低温製法(低温保管・低温精米・低温梱包)で新米の味わいを1~2回で食べきれる3合入りの新鮮小袋パックを皮切りにパックごはん、切りもち、レトルト食品、飲料水とラインアップを拡充。現在、アイリスフーズで扱う商品数は約500品に及ぶ。

「ラインアップの拡充に当たっては基本的にはお米をメーンに考えている。今後もお米のおかずになるような商品をどんどん増やしていく。賞味期限の長い商品、防災食、飲料水の自社生産により災害時に貢献できる」と説明する。

生産体制は、精米が舞台アグリイノベーション亘理工場、パックごはんがアイリスオーヤマ角田工場、切りもちがアイリスフーズ岩手工場とアイリスオーヤマ角田工場と分散。プラ製品などを製造するアイリスオーヤマの既存工場に製造ラインを入れることで、土地の取得や建屋の建造にリードタイムがかからないのも強みとなっている。

直近では、(株)ゆのたに(本社・新潟県魚沼市)からレトルト食品、缶詰とそれらの製造および販売に関する事業を譲り受け2月15日からアイリスフーズ魚沼工場として稼働している。

譲受したレトルト食品と缶詰については、「一般販売向けに内食需要に対応した惣菜などを今後発売していきたい。また、長期保存食品(賞味期限5年)や缶詰は防災食としても活用できるため、災害時の社会貢献事業の側面もある」と説明する。

このほど参入した飲料水事業も「一番の目的は災害対応」だという。

アイリスオーヤマは約30億円を投じ富士小山工場(静岡県駿東郡小山町)の一部を改修して「富士山の天然水」と「富士山の強炭酸水」の生産ラインを新設。同工場内でペットボトルを内製化したのも、災害時の安定供給を考えての判断となった。

「首都圏を中心に国内で何か起こった時に、自社製造ならではのスピード対応で迅速に供給していく」との考えを明らかにする。

2月13日に発生した福島県沖地震を受け、アイリスオーヤマは約30億円の追加投資を決定。今年10月をめどに富士小山工場に第2ラインを増設し生産・供給能力を2倍する。

災害時支援策としては、いくつかの自治体と災害協定を締結。「締結していない自治体でも官公庁からの要請があれば無償で提供していくことも考えている」。

防災食は今後拡充の方針でアルファ化米の製品化などを検討する。

また、アイリスオーヤマでは、防災商品拡充の一環として「防災リュック」の内容をリニューアルし、「防災セット」シリーズとして2月26日から発売。これには、災害時に不可欠なマストアイテム(簡易トイレ・ウォータータンク・懐中電灯など全23点)を標準装備したほか、災害時に役立つ4カテゴリ(飲食料品・衛生・寝具・電気・作業)の商品が入っている。

今後の災害対応については「『何かあったらすぐ動く』がアイリスの企業文化。そのためには準備が大事で、全国の工場に支援商品や防災食商品を置いて、すぐに支援できる体制にしておかなければならない。スピード対応が最も重要」と語る。

山田社長自身の座右の銘は「努力は必ず報われる」。「何か復興にお役立ちできるようなことがあれば、進んでやりたい」と意欲をのぞかせる。